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システム数理の現状と展望
小特集 6.
スパースモデリングの基礎とその動的システム同定への応用
Fundamentals of Sparse Modeling and Its Application to Dynamical System Identification
Abstract
本稿では,機械学習や信号処理の分野で近年盛んに研究されているスパースモデリングについて,その基礎と動的システムへの応用について解説する.特に本稿では回帰問題を題材として,従来法である正則化法を解説し,その展開としてスパース正則化の観点からスパースモデリングの基礎を解説する.また,ノルムを用いた凸最適化問題を高速に解く近接勾配法,及び正則化を直接解く貪欲法のアルゴリズムを紹介し,多項式曲線フィッティングの例題によりそれらの特徴について述べる.更に,動的システムへの応用としてシステム同定の問題を取り上げ,スパースなインパルス応答の推定にスパースモデリングが利用できることを述べる.
キーワード:スパースモデリング,圧縮センシング,正則化法,最適制御,スパース制御
スパースモデリングは,データの背後に潜むスパース性を陽に考慮してモデル化を行う方法である.この方法は,大量のデータから知見を引き出すビッグデータ分析とは異なり,少ないデータしか得られない状況でデータ発生源の特性を調べるというような場面で威力を発揮する.データの取得に膨大な時間や費用がかかるような問題,例えばブラックホールの撮像(1)や医療MRI(Magnetic Resonance Imaging)(2)などで,スパースモデリングの成功事例が報告されている.このスパースモデリングの技術は,圧縮センシング(3)やスパース表現(4)とも呼ばれる.上記の応用のほか,データ分析(5)や画像・信号処理(6),情報通信(7),システム制御(8),(9)など様々な分野へ応用され,大きく注目されている.
スパースモデリングでは,ベクトルのスパース性をノルム(ベクトルの非ゼロ要素の数)で測り,ノルムを最小化するという定式化を行う.しかし,ノルムを含む最適化問題は組合せ最適化問題となり,更にNP困難であることが知られている(10).よって,サイズの大きい最適化問題を直接解くことは極めて難しい.スパースモデリングでは,主に以下の二つのアイデアによってこの問題に対応する.
・ノルムをノルムで近似して解く.
・貪欲法アルゴリズムにより局所的に解く.
第1の方法は,ノルムが凸であるため,凸最適化問題に帰着でき,内点法などの高速アルゴリズムが利用できる(11).また,ノルムで近似して求めた解と元の最適解の関係についても,多くの研究がある(例えば文献(12)).ただし,それらが等価であるかどうかをチェックすること自体がNP困難であるため(13),現実問題として,で求めた解,例えば画像処理結果を人間の目で見て,その良し悪しを判断するというようなことが行われる.
第2の貪欲法は,組合せ最適化問題を解くための強力な手法であるが,大域的最適解が得られるという保証はない.本稿でも説明するが,例えば最適化により求めた解を初期値として,より良い解を見つけるために,貪欲法アルゴリズムを使うこともよく行われる.
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