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解説
人工知能(AI)技術と電磁気学を用いた最適設計[Ⅱ・完]
――深層学習・モンテカルロ木探索の応用――
Design Optimization Based on Electromagnetism and Artificial Intelligence (AI)[Ⅱ・Finish]: Deep Learning and Monte Carlo Tree Search
A bstract
深層学習により,モータの断面画像からトルク特性を予想できる.構築した深層学習機を計算コストが大きい電磁界解析の代わりに用いることで,トポロジー最適化を高速化した.また最適化結果の説明のためにGrad-CAMにより設計感度の高い領域を可視化した.モンテカルロ木探索を用いた自動設計は様々な対象に適用できると期待される.自動車用モータの例を紹介する.
キーワード:深層学習,代替モデル,トポロジー最適化,Grad-CAM,モンテカルロ木探索,自動設計
人工知能(AI)は今後,我々の社会にどのように影響を与えるだろうか.囲碁・将棋の世界では,AIを用いた対戦ソフトの出現により,棋士による対戦が意味のないものになると危ぶむ声もあった.しかし現在では,AIの手筋を学ぶことで若手棋士が頭角を現し,棋界は逆に活況を呈しているように思われる.
囲碁・将棋と同様に,高度な知識と創造性が必要な開発・設計にも,AIの有効活用が期待される.AIによる設計支援に加え,AIが生成した新奇な構造・組成を,開発者が現実世界に適合させることで新しい製品を生み出す―このような次世代の開発スタイルも期待される.また開発者がAIから学んだ知見を逆にAIに反映させることで,両者が成長することも可能だろう.
AI技術の中でも特に深層学習は,画像・音声などの高い認識性能を上げており,大きな注目を集めている.設計・開発にも深層学習の応用が進んでいる.2.ではその一つの例として,深層学習による最適設計の高速化について紹介する.計算コストの高い電磁界解析を深層ニューラルネットワーク(NN)による特性推定で代替することで,効率的な最適化が可能となる.他の例として,深層NNにより多様な構造を生成し,低次元の潜在空間でそれらの評価を行うことで,最適設計を実現する方法がある.例えば既存の分子化合物データを用い,オートエンコーダを構成する方法がある.これにより実在する分子を潜在空間の点に埋め込み,各点に対応する分子の特性を予測する.更に求める特性を持つ最適解を潜在空間中で探索し,それをデコーダで分子構造に戻す(1).この方法により,従来ない組成の化合物の発見が期待できる.このような生成ネットワークは機械部品のトポロジー最適化にも適用されている(2).また,敵対的ネットワークにより生成した構造の適否を判断し,実現可能な構造に絞ることで,効率的に最適解を探索する方法も提案されている(3).
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