解説 ディジタルコヒーレント伝送システムのオープン化とソフトウェアによる自動化

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 解説 

ディジタルコヒーレント伝送システムのオープン化とソフトウェアによる自動化

Open Activity and Software Automation of Digital Coherent Transmission System

西沢秀樹 間野 暢 穴澤和也 木坂由明

西沢秀樹 正員 日本電信電話株式会社NTT未来ねっと研究所

間野 暢 正員 日本電信電話株式会社NTT未来ねっと研究所

穴澤和也 日本電信電話株式会社NTT未来ねっと研究所

木坂由明 正員 日本電信電話株式会社NTT未来ねっと研究所

Hideki NISHIZAWA, Toru MANO, Yoshiaki KISAKA, Members, and Kazuya ANAZAWA, Nonmember (NTT Network Innovation Laboratories, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Yokosuka-shi, 289-0847 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.3 pp.239-245 2022年3月

©電子情報通信学会2022

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 近年,様々な団体によってディジタルコヒーレント伝送システムのオープン化及びソフトウェアによる自動化が議論されている.2010年頃から光伝送装置にコヒーレントDSP LSIが搭載され,インタフェースの標準化が進み,同一ハードで様々な伝送方式に対応できるようになり,ソフトウェアによる自動化の期待が高まった.本稿では,ディジタルコヒーレント伝送システムのオープン化の歴史や基本技術について述べた後,最新の技術トレンドを踏まえたソフトウェア自動化によるネットワークの柔軟性向上・高効率化の展望とトレンドを紹介する.

キーワード:ディジタルコヒーレント,オープンネットワーキング,ホワイトボックス,ディスアグリゲーション,オープンソース

1.は じ め に

 長距離光伝送方式は,電気Time Domain Multiplexing(TDM),Wavelength Division Multiplexing(WDM)+光ファイバ増幅器,ディジタルコヒーレントの三つの技術をトリガとして伝送容量が40年間で約100万倍に拡大した.革新的技術が登場するたびに,装置そのものだけでなく伝送路設計手法や運用も刷新され,大容量なインフラの実現を支えてきた.

1.1 WDM+光ファイバ増幅器

 1970年の低損失ファイバの実現や半導体レーザの小形化により,本格的な光通信の研究が始まり,1980年代の後半まで複数の信号を時間軸上で多重して伝送するTDM技術の研究が進んだ.1.5µm帯の大容量長距離光ファイバ通信が1987年に陸上幹線で商用化された後,1990年代に光ファイバ増幅器の商用化により線形中継伝送が可能になって伝送距離が大幅に拡大した.またArrayed Wave Guide(AWG)フィルタの登場や光ファイバ増幅器の広帯域化により波長多重伝送が可能になって容量が拡大した.かつて伝送距離・容量の制限要因は光ファイバの伝送損や受信機の受光感度限界であったが,光増幅器による線形中継伝送方式以降は光ファイバ増幅器によって増幅された信号光―自然放出光ビート雑音(1),(2)や,高パワーのWDM信号光がファイバ伝送路を伝搬する際に生じる四光波混合(入射光の近傍に新しい周波数の光が発生する現象),相互位相変調(他の周波数光により位相が変化する現象),自己位相変調(自身の周波数光により位相が変化する現象)などの非線形光学効果(3)が主な制限要因となり,光子の存在確率のレート方程式(マスタ方程式)によるOptical Signal to Noise Ratio(OSNR)計算手法(1),(2)や,スプリットステップフーリエ法による非線形光学効果の計算手法(3)が提案され,伝送特性の評価ができるようになって光伝送システムの普及につながった.

 WDM伝送技術によりファイバ当りの伝送容量を飛躍的に増大することができ,2003年には10Gbit/s光信号の80波多重(800Gbit/s)のWDMシステムが商用化された.しかし,更なる大容量化に向けては,光ファイバ増幅器の増幅帯域の制限から大幅に波長数を増やすことはできず,一波長当りのビットレートを40Gbit/sや100Gbit/sへ高速化する技術への期待が高まった.

1.2 光伝送装置へのディジタル技術適用


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