解説 HRテクノロジーの最新動向

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.105 No.3 (2022/3) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


 解説 

HRテクノロジーの最新動向

Latest Trends in HR Technology

岩本 隆

岩本 隆 正員 慶應義塾大学大学院経営管理研究科経営管理専攻

Takashi IWAMOTO, Member (Graduate School of Business Administration, Keio University, Yokohama-shi, 223-8526 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.3 pp.233-238 2022年3月

©電子情報通信学会2022

A bstract

 HRテクノロジーという言葉自体は2000年前後から存在するが,2010年代に入ってからHRテクノロジー市場が急成長している.日本では,筆者らが2015年4月にHRテクノロジーという言葉を発信して以降,参入企業が急速に増加している.HRテクノロジーを活用した人的資本マネジメントの経営における重要性が世界中でますます高まっており,産業人材政策や金融政策でも深く検討されるようになり,人的資本開示の義務化も進んでいる.企業の持続的成長のために,HRテクノロジー活用は今後ますます重要になっていることが想定される.

キーワード:HRテクノロジー,HCMアプリケーション,人的資本開示,人的資本経営

1.HRテクノロジーの推移

 FinTech(フィンテック),HealthTech(ヘルステック)など,〇〇Techと呼ばれる言葉は2010年代以降に使われるようになったものが多いが,HRテックやHRテクノロジーという言葉は海外では2000年前後から使われている.HRはHuman Resources(人的資源)の略である.米国では,Human Resource Technologies社が1998年3月31日に「HR TECH」を,LRP Publications社が2000年8月28日に「HR TECHNOLOGY」を商標登録している.「HR TECH」は2005年3月26日に商標権が放棄され米国では普通名称化されているが,「HR TECHNOLOGY」は2021年時点でも商標権が維持されている.

 HRテクノロジーは基本的には企業が使う人事の情報システムのことであり,人事の情報システムの名称としては「HRIS(HR Information System,人的資源情報システム)」,「HRMS(HR Management System,人的資源マネジメントシステム)」と変遷し,現在では「HCM(Human Capital Management,人的資本マネジメント)アプリケーション」と呼ばれている.HCMアプリケーション市場は2010年代に入ってから急成長し始めた.人事の情報システムは,従来は,従業員の基本情報の記録や,勤怠管理,給与計算などを行う情報システムが中心だったが,2010年代に入って,コンピュータ,通信,クラウドネットワークなどの技術の進化により,ビッグデータが容易かつ安価に分析できるようになり,人事の領域でもビッグデータやAI(Artificial Intelligence,人工知能)を活用した多くのクラウドアプリケーションが市場で展開されるようになった.HCMアプリケーション市場はかなり細かくセグメント化されており,2021年時点では給与計算,勤怠管理,人材採用,L&D(Learning & Development),タレントマネジメントなどが規模の大きな市場セグメントであるが,これらに加え,周辺の様々な用途が開発され続けており,様々な新たな市場セグメントが成長し始めている.

 HCMアプリケーション市場にはスタートアップ企業の参入が非常に多いが,大企業もM&A等によって多く参入している.2021年時点の世界の市場シェアのトップグループを占める企業はドイツのSAP社を除くと大半が米国の企業であるが,実は売上高シェアで世界トップは(株)リクルートホールディングスである.リクルートグループが2012年9月に買収したIndeed社の事業が急成長している.Indeed社は2004年に米国テキサス州で設立し,求人広告サイトの検索エンジンを展開するHRテクノロジースタートアップ企業である.Indeed社の事業を含む(株)リクルートホールディングスのHRテクノロジー事業セグメントの2021年3月期の売上高は4,232億円であり,これに他の事業セグメントにおけるHRテクノロジー事業の売上高が加わったものが(株)リクルートホールディングスの直近のHCMアプリケーションの売上高となる.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。