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RF Circuit Impairments and Device Identification
りんごは赤くて丸い果物だが,よく見ると同じ種類であっても一つ一つの色や形,大きさは異なっている.これはみかんであっても柿であっても同じことが言える.では学生諸君の身の回りにあるスマホなどの電子機器ではどうだろうか.全く同じ規格で作られた精密部品を工場で組み立てているのだから違いはない,と思われるかもしれない.確かに見た目には区別がつかない.パソコンを自作したことがある人は,構成する部品のちょっとした違いが性能に大きな差をもたらすことを実感したことがあるだろう.20年以上前,無線LANが登場し始めた頃,パソコン本体,無線LANカード,親機の種類の組み合わせによってはつながらないことがあった.その後Wi-Fi CERTIFIEDにより相互接続性の問題はなくなり,Wi-Fiは今では無線LANの代名詞となっていることは周知のとおりだ.このように,同じ規格で作られた製品やそれを構成する部品にほんの少しの違い,つまり個体差があるだけで,大きな不具合が生じてしまう.そのような違いを何らかの方法で削減若しくは補償する技術を開発し性能改善を図るのも我々技術者/研究者の仕事である.
個体差はその機器の持つ多様性の一つだ,と捉えると悪いことばかりではない.人における顔認証や指紋認証のような生体認証と同様に,各機器固有の物理的特性として端末の認証や識別に応用することができる(図1).これは物理層セキュリティとかRadio Frequency(RF)fingerprintと呼ばれている(1).通常,通信端末はMACアドレスやIPアドレス等のディジタル情報を暗号化して互いに交換することで認証/識別されている.しかしながら,近年,IoT(Internet of Things)機器はその普及に伴い,情報の改ざん,なりすまし,更には不法な電波の放射,不正または未知の無線機による攻撃などの脅威にさらされている.より高度な暗号化技術を導入するなどの対策が考えられるが,各端末には相応の高い処理能力が要求される.センサネットワークや産業用制御システムで用いられるようなIoT機器にそのような高い処理能力は望めない.またIoT機器を構成する部品の精度は余り高くないことが多く,端末固有の物理的特性に基づく認証や識別技術はIoTセキュリティの強化に期待されるところである.
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