特集 13.【ロボティクス】深層学習のロボット技術への影響と今後の展望

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Vol.105 No.5 (2022/5) 目次へ

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特集13. 第4部 融合分野
【ロボティクス】
深層学習のロボット技術への影響と今後の展望
Impacts of Deep Learning to Robotics and Future Perspective
尾形哲也

尾形哲也 早稲田大学理工学術院基幹理工学部表現工学科

E-mail ogata@waseda.jp

Tetsuya OGATA, Nonmember (Faculty of Science and Engineering, Waseda University, Tokyo, 169-8555 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.5 pp.424-429 2022年5月

©電子情報通信学会2022

abstract

 本稿では,深層学習技術がロボティクスに与えた影響と今後の展望について概説する.まず動作生成手法について,認識システム,深層強化学習に触れた上で,予測誤差を逐次的に最小化しつつ動作生成を行う深層予測学習のフレームについて紹介する.また実世界と統合した言語学習という視点から,記号接地問題を背景とした運動言語の統合モデルについて,その効果と問題を解説する.最後に今後の展望として,内閣府ムーンショット目標3におけるAIRECプロジェクトのコンセプトを紹介する.

キーワード:エクスペリエンスベースド学習,予測符号化,深層予測学習,記号接地問題,AIRECプロジェクト

1.は じ め に

 近年,サイバーフィジカル若しくはディジタルツインなど,ディジタルの仮想世界と現実世界の接続に関する概念に結び付いた研究が盛んになっている.しかし,現実には両者を接続し切れないもの,また接続してはいけないものがある,という限界を意識した上でその利用を考えることが重要であると筆者は考えている.その象徴的な対象として,ロボット研究があるといえるだろう.

 ここで深層学習は,画像処理,音声処理,自然言語処理において,非常に強力なツールとなっている.その内部表現とメカニズムは極めて複雑であり,その理解は十分に進んでいるとは言えないが,現在多くの分野で利用されている.しかし現実世界での応用となると大きな壁がある.事実,近年幾つかのAIロボットプロジェクトが立ち上がっているが,同時に中止に追い込まれているプロジェクトも多くある.今後,深層学習技術のロボットなどの実世界システムへの実用化が,次世代AIの重要な要素になると期待される.

 本稿では,特に深層学習という技術がロボティクスに与えた影響について,動作生成,言語という視点から概説するとともに,関連した筆者らの研究や企業との連携を紹介する.更に今後の展望として,筆者が参画する内閣府ムーンショット目標3におけるAIREC(AI-driven Robot for Embrace and Care)プロジェクトの概要を紹介する.

2.深層学習のロボット応用の三つのアプローチ

 ロボットのトップカンファレンスに,最初にディープラーニングという言葉がキーワードで入ったのは,2017年のIEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems(IROS2017)であり,他の分野に比べ決して早くはない.ただその時点から急激に応用研究が増えてきている.以下に特にロボットの動作生成に関する応用のアプローチをまとめる.

2.1 認識


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