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推薦システムにおける嗜好予測には各種の機械学習手法が次々と適用されてきたが,深層学習も例外ではない.しかしながら,近年の検証実験では,深層学習による予測精度の向上を支持する結果は得られなかった.そこで,少なくとも既存手法と同程度の性能をこの検証実験で示したNeuMFとMult-VAEを取り上げ,深層学習でも予測精度が向上しない理由についても考察する.その後,推薦結果の説明や提示などにといった推薦の周辺部分に,深層学習を用いた画像・自然言語処理技術が活用されている例を紹介する.
キーワード:推薦システム,協調フィルタリング,深層学習,ニューラルネットワーク
推薦システムとは,Konstanの定義によれば,「Tools to help identify worthwhile stuff(どれに価値があるかを特定するのを手助けする手段)」である.利用者が求めているアイテム(物や情報など)が存在していることは分かっていても,多くの無関係な候補に埋もれて,それを見つけられない情報過多(Information Overload)の問題を解消することが目標である.情報検索技術と類似しているが,明示的で直接的な検索質問を用いず,利用者との対話履歴といった暗黙的で間接的な情報に基づいて利用者の嗜好を予測する点が異なる.
推薦システムは,1990年代中頃に研究が始まった.そして2000年代には,非常に多品種の商品を扱う電子商取引サイトでの需要が高まって急速に普及した.利用者の嗜好を推定するには,近隣法,行列分解,確率モデルなど各種の機械学習の予測技術が応用されてきた.この流れに従い,推薦システムに関する国際会議でも,深層学習を嗜好予測に用いる研究は2016年以降に増加した.しかしながら,画像・音声・自然言語と比べて,それほど大きく予測精度は向上していない.むしろ,深層学習の推薦システムにおける効果は,画像などの特徴を推薦予測に利用するときや,推薦結果を利用者に自然言語処理を用いて提示するといった周辺部分で目立っている.
本稿ではまず,2.で推薦システムの形式的問題設定について紹介する.そのあと,推薦システムの既存手法である行列分解モデルと確率モデルを,深層学習を用いて非線形化したモデルを,それぞれ3.と4.で紹介する.最後の5.では,嗜好予測以外の周辺部分で深層学習が利用されている例を紹介する.
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