小特集 マイクロ波・ミリ波を用いた生体計測の最新動向 小特集編集にあたって

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.105 No.6 (2022/6) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


小特集

マイクロ波・ミリ波を用いた生体計測の最新動向

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 水谷浩之

 近年の少子高齢化の進行に伴い,がんなどの生活習慣病を予防し健康寿命を高めることや,一人暮らしの高齢者の安否などを遠隔で確認する見守りサービスへの関心が高まっている.これらを実現するために,心拍,呼吸,血圧,血糖値,がんの有無などの生体に関わる情報をより簡便に取得し,また生体信号を基に高齢者の位置や行動などを推定する技術の開発が行われている.マイクロ波・ミリ波技術はこれまで主に無線通信やレーダなどで用いられてきたが,生体信号の計測についても非接触あるいは非侵襲で行えるほか,プライバシーに配慮したセンシング手法として注目されている.本小特集では,マイクロ波・ミリ波技術を応用した生体計測の技術動向や最新の成果を紹介する.

 第1章では,梶原昭博氏(北九州市立大学)にミリ波センサを用いた心拍変動と連続血圧の測定技術について紹介頂いた.ミリ波が有する高周波と広帯域性,低プライバシー侵害性等を活用することで,被計測者がストレスを感じることなくこれらの生体信号を計測できることが期待される.ミリ波センサの構成や,ミリ波センサを活用したホームヘルスケアシステムについても説明頂いた.

 第2章では,白木信之氏(岩手大学)らの研究グループにMIMOレーダ技術を応用した多人数生体位置の計測技術について紹介頂いた.送受信局を複数用いることによる位置推定の高精度化について,数式を用いて動作原理を説明頂いたのち,屋内環境における実験結果を紹介頂いた.本技術は,一人暮らしの高齢者の安否確認や高齢者施設の異常検知などへの応用が期待される.

 第3章では,本間尚樹氏(岩手大学)らの研究グループにマイクロ波帯を用いた心拍計測技術について紹介頂いた.2GHz帯といった低マイクロ波帯を用いて心拍を高精度に計測する場合,呼吸成分の分離が課題となる.これに対して,擬似逆正接復調法が有効であることを,詳細な動作原理の説明と実験結果を交えて紹介頂いた.本技術により,例えば呼吸を止めずに自然な状態での長時間モニタリングの実現が期待される.

 第4章では,中村昌人氏(NTT)らの研究グループに,マイクロ波を用いた非侵襲なグルコースセンシングの技術動向について紹介頂いた.本技術の基本原理,生体内の誘電率変化を検出するデバイスから,同軸プローブ法を用いたグルコースセンシングのin vivo検証結果まで幅広く紹介頂いた.本技術により,糖尿病患者の血糖値コントロールや糖尿病の予兆の早期発見などへの応用が期待される.

 第5章では,木寺正平氏(電気通信大学)にマイクロ波を用いた乳がんスクリーニング技術について紹介頂いた.マイクロ波による乳がん診断は安全,簡便かつ高精度ながん診断技術として注目されており,本章では逆散乱解析と深層学習を取り入れた誘電率再構成法について,動作原理と簡易ファントムを用いた実験結果を交えて紹介頂いた.

 本小特集がマイクロ波・ミリ波技術者のみならず,他の分野の技術者や生体計測を利用したアプリやサービスを検討している方々との間をつなぐきっかけとなれば幸いである.

 最後に,御多忙の中,原稿を御執筆頂いた著者の皆様,また多数の御支援を頂いた編集チームの皆様,学会事務局の皆様に深く感謝申し上げます.

小特集編集チーム

 水谷 浩之  竹中  充  江口 真史  河島  整  德田  崇  藪野 正裕 


オープンアクセス以外の記事を読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。