特集 5-1 東京2020大会のサイバーセキュリティの総括

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.105 No.8 (2022/8) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


5.サイバーセキュリティ

特集 5-1

東京2020大会のサイバーセキュリティの総括

Summary of Cyber Security Activities at the Tokyo 2020 Games

坂 明 居林宏明

坂 明 居林宏明 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

SAKA Akira and IBAYASHI Hiroaki, Nonmembers, The Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games.

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.8別冊 pp.1015-1018 2022年8月

©電子情報通信学会2022

abstract

 オリンピック・パラリンピック競技大会は,全世界から注目を浴びる大会であり,毎大会,多種多様なサイバー攻撃を受ける.一方,年々クラウド環境の拡大などのITの多様な活用が進み,サイバーセキュリティリスクをコントロールしにくい状況となっている.組織委員会のサイバーセキュリティチームが大会関係者の環境を含め,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の関連システム全体に関するサイバー脅威について,どのように考え,どのようにアプローチし,どう向き合ったのか,また政府や関係者も含めた取組みが今後の日本にとってどのようなレガシーとなったかを紹介する.

キーワード:東京2020大会,サイバー攻撃,セキュリティガバナンス

1.ま え が き

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)は,新型コロナウイルス感染症による影響(以下,コロナ禍)を受け,ほとんどの会場で無観客開催とせざるを得ない状況ではあったが,国際オリンピック委員会(IOC: International Olympic Committee)から発表されたとおり,世界で30億5,000万のユニークビューワがテレビやディジタルプラットホームで大会を視聴し,新たな技術とディジタルイノベーションによってより多くのファンが競技に“参加(interact)”する,これまでで最もengagedな大会となった(1).コロナ禍において競技を行い,ディジタルプラットホームを通じて全世界からの参加を得て大会を開催するためには,サイバーセキュリティの確保は不可欠であった.オリンピック・パラリンピック競技大会では,過去にも運営に影響を及ぼしかねない多くのサイバー攻撃が観測されており,東京2020大会でも大会期間中に計4.5億回のセキュリティイベントを観測し,それを遮断するに至った.

 組織委員会では設立当初からサイバーセキュリティ対策を重要課題と捉えており,大会史上初めて専属メンバによる独立した部署であるサイバーセキュリティ部を編成し,更にCISOを長として組織委員会の各局を横通しで連携するセキュリティオペレーションセンタ(SOC: Security Operation Centre)の体制を構築した.本稿及び以降の記事では,サイバーセキュリティ部とSOCを合わせてサイバーセキュリティチームと表記する.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。