特集 2-12 東京2020大会における無線機器の運用と周波数調整

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2. 通信・無線・放送

特集 2-12

東京2020大会における無線機器の運用と周波数調整

Operation of Radio Equipment and Coordination of Frequency Usage at the Tokyo 2020 Games

石田泳志

石田泳志 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジーサービス局

ISHIDA Eiji, Nonmember, Technology Services Bureau, The Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games.

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.8別冊 pp.873-878 2022年8月

©電子情報通信学会2022

abstract

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では,世界各国への放送中継,取材,時間計測・判定などの競技運営,各国選手団の連絡,大会関係者の連絡など,多種多様な用途の無線機器が利用された.ユーザが無線機器を利用する上で利用計画と事前調整は必須であり,組織委員会は,総務省の協力を得て,有害な混信を避けるための周波数調整を実施し無線機器の会場への持込みを承認した.本稿では,周波数申請から無線機器の会場持込みまでの手続きと無線機器の運用の結果を概観するとともに,大会期間を通じて実施した電波監視についても報告する.

キーワード:オリンピック,パラリンピック,無線,周波数,電波監視,総務省

1.は じ め に

1.1 周波数調整の必要性

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)では,世界各国への放送中継,取材,時間計測・判定などの競技運営,各国選手団の連絡,大会関係者の連絡など,多種多様な用途の無線機器が利用された.開催都市契約では,東京2020大会で必要な周波数の割当・管理・監視を日本が無償で行うこととされており,周波数割当監理の所管官庁である総務省の協力を得て対応することとした.

 ユーザが無線機器を利用する際に無線機器の利用計画と事前調整は必須である.そこで組織委員会では,一時的かつ限定的な場所での周波数の利用を前提に,有害な混信を避けるための周波数調整を実施した上で,無線機器の会場持込みを承認することとした.

 東京2020大会は,周波数の割当が極めて難しい大会であった.30日間の開催期間に55競技(オリンピック33競技,パラリンピック22競技)が集中して開催された.その多くが行われた東京都内では,お台場地区や有明地区をはじめ近接した会場が多く,同じ周波数を異なる会場で繰り返し使用できないことも多かった.加えて,開催都市の東京は,日本の経済の中心であり産業活動が集中し多くの電波が使用されている.更に,関東平野に位置し東京湾に面しているため広範囲に電波が伝搬しやすい立地であり,これらの地理的要因が割当を難しくした.このような状況により,東京2020大会では,特にニーズの高いワイヤレスマイクやワイヤレスカメラを中心に,過去に類を見ない規模の周波数調整の対応が必要であった.

1.2 業務体制

 膨大な周波数申請を受領することが予想され,会場ごとの割当を行うための事前調査も必要であった.そうした業務の対応範囲・業務量は組織委員会職員のみで対応できるものではなく,またかなりの専門性が求められる業務でもあった.

 このため,組織委員会では,東京2020大会で必要な周波数の利用のための周波数申請の受付・結果通知や会場でのユーザサポート等は2016年から,また,会場で使用可能な周波数を把握し使用条件を検討するための会場ごとの周波数帯特性の基礎データを収集する業務は2015年から,各々ノウハウ・業務経験のある企業に委託し,体制を整備していった.


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