小特集 ドローン活用の今 小特集編集にあたって

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Vol.105 No.9 (2022/9) 目次へ

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小特集

ドローン活用の今

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 川田亮一

 近年,各種ドローンの活用が大きく広がりつつある.法制度の観点でも,2022年度中に有人地帯での目視外飛行を可能にするべく,官民協議会等での検討が進んでいる.そこで本小特集では,様々な分野への応用が進みつつあるドローンの活用の現状について,幾つかの典型的事例等を専門家の皆様に具体的に解説をお願いした.

 まず第1章では総論として「世界のドローン利活用の動向と将来展望」と題し,先端ロボティクス財団の野波氏に全体動向を俯瞰頂く.特に,機体のタイプ別特徴・動力別特徴・飛行性能・ユースケースと機体タイプとの関係等について解説を頂き,ユーザ視点からの利活用動向についても展望頂いている.

 次の第2章では「ドローン×AIによる電力設備保守業務の効率化」と題し,中部電力の追良瀬氏に,電柱や鉄塔をはじめとする電力設備の巡視・点検業務を効率化していくためのドローンとAIを活用した研究開発の取組みについて御説明頂く.目の前の手動操作のみならず,目視外自動飛行・AIによる自動画像解析により,更なる効率化が期待されている.

 続いて第3章では,東京工業大学・ソフトバンクの藤井氏ほかに,「遭難者救助支援への応用」と題し,ドローンに搭載した無線中継局によりサービスエリア外の空間を臨時にサービスエリア化する「ドローン無線中継システムによる遭難者位置特定支援システム」について解説頂く.遭難者の携帯端末の位置情報を一刻も早く通報し,人命救助に役立てるシステムである.

 第4章では,養殖業や水域インフラ点検の人手不足等の社会課題に対する取組みとして,水中ドローンと空中ドローンを組み合わせた「水空合体ドローン」について,KDDI総合研究所の西谷氏ほかに御紹介頂く.携帯電話回線を通じて,空中ドローンのみならず水中ドローンの遠隔制御や水中映像の実時間伝送を可能とするものとなっている.

 エンターテインメント分野への応用としては,多数の遠隔制御可能な「空飛ぶLED」で構成されるドローンライトショーが,東京オリンピックの開会式でも使われるなど,近年大きな広がりを見せている.そこで第5章で「ドローンライトショーの歴史と展望」について,レッドクリフの佐々木氏に御説明頂く.現在では同時に数千台のドローンが制御できるようになっており,その記録は年々伸びている.

 ドローンが広く実用化されるにあたっては,その性能評価基準も重要となる.そこで第6章で,産業技術総合研究所の岩田氏に「ドローン機体の性能評価」について解説を頂く.中でも飛行限界速度計測などのドローンの安全性能を評価する効果的な試験方法について御説明頂く.

 最後に第7章で「サイバーセキュリティの観点でのドローン」と題し,情報通信研究機構・ニッシンの竹久氏ほかに,セキュリティの視点からの説明をお願いした.ドローンは自動車などと違い,空を飛ぶという属性を持つため注意すべき点が多い.空飛ぶIoT機器として,サイバーセキュリティにおける攻撃法や防御法への理解が重要となる.

 現在のドローンには,機械工学分野のみならず,通信・セキュリティも含めた様々な分野も要素技術として加わり,それとともに応用が大きく広がりつつある.読者諸氏の各御専門からの貢献に対する期待も年々高まっているといえよう.本小特集がその一助となれば幸いである.

 最後に,御多忙の中,貴重な原稿を御執筆頂いた皆様,編集チームの皆様,学会事務局の皆様に深く感謝申し上げます.

小特集編集チーム

 川田 亮一  江島 將高  髙橋 桂太  古本 啓祐 


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