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映像符号化技術の圧縮率の向上,通信ネットワークの伝送速度の高速化,録画/再生デバイスの性能向上により,高画質映像を配信・記録できるようになってきた.このような映像では,高解像度(例:4K,8K),高フレームレート(例:120fps,240fps),高輝度(HDR: High Dynamic Range)が用いられるため,従来のHD(High Definition)映像よりもデータ量が多い.そのため,映像を符号化によりデータ圧縮して伝送・記録することは不可欠であり,符号化後の映像品質を適切に設計・管理することは非常に重要である.
映像品質を設計・管理するためには,主観品質に基づき実施することが基本であり,主観品質評価法が必要となる.ITU-R(International Telecommunication Union Radiocommunication Sector)は,テレビジョン映像を対象とした主観品質評価法をBTシリーズとして勧告を制定し,ITU-T(Telecommunication Standardization Sector)は,IPネットワークで配信される映像に対する主観品質評価法をPシリーズとして勧告を制定している.映像配信サービスを提供する事業者は,これら主観品質評価法を用い,映像品質を定量化し,テレビジョン映像に対するビットレートを設計してきた.
一方で,昨今利用されているアダプティブビットレート映像配信では,固定のビットレートを用いるのではなく,シーンごとに画質レベルが一定になるようにビット量を割り当てることが多くなってきている.このような場合,主観品質評価を実施し,ビットレートを決定することはできないため,映像信号を用いた客観品質評価技術を用いることが一般的である.客観品質評価技術については,ITU-RがBTシリーズ,ITU-TがJ若しくはPシリーズの勧告として標準化を進めている.
以降,高画質映像を対象とした主観品質評価法及び客観品質評価技術について概説し,今後の展望を述べる.
映像の主観品質評価法では,評価対象となる映像を評価者が観視し,体感した品質を評価する.評価結果は,評価に用いる映像ソース,ブース等の観視環境等の影響を受けることから,再現性の高い評価結果を得るためにITUではこれらの条件を規定した勧告を標準化している.テレビジョン映像を対象とした主観品質評価法はITU-R勧告BT.500(1),IPネットワークを経由する映像配信等を対象とした主観品質評価法はITU-T勧告P.910(2)にそれぞれ規定されている.
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