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本稿では,画像の分析・合成システムの役割に焦点を当て,画像復元を概説する.まず,画像復元の目的と古典的な手法の例を紹介する.次に,画像復元とスパースモデリングの関係を説明する.また,同モデリングにおける事前知識としての画像生成過程の役割を説明し,画像合成のための畳込み辞書とその学習について説明する.最後に求解アルゴリズム中に現れる分析・合成処理に着目し,深層ループ展開(Deep Unrolling)や深層画像事前分布(DIP: Deep Image Prior)との関係と解釈にも触れる.
計測技術の発展とともに多様な画像データが取得可能となった.例えば,光学カメラのほか,車載や監視のためのレーダ,生体の断層撮像,天体の電波観測などである.同時に,高性能な画像復元が求められ,観測の物理的な機序を効果的に表現できるモデルが望まれている(1)~(3).
これらモデリングに畳込みネットワークが活用されている.同ネットワークは,画像の局所的な関係性を利用し,要素画像の結合として観測過程や対象物を効率的に表現する(4).特に,非線形処理とともに多層構造とした深層畳込みニューラルネットワーク(DCNN: Deep Convolutional Neural Network)は,認識に加え復元にも著しい性能改善をもたらした(5),(6).DCNNは,その高い汎用性の一方で,低い解釈性と説明可能性に課題がある.領域知識を生かした系統的・戦略的な構造の設定や学習は容易ではない.画像復元は科学計測や医療支援など装置や対象がしばしば限定されるため,応用ごとの環境や条件に合わせた領域知識の利用が望まれる.
本稿では線形システム,特にフィルタバンク(FB: Filter Bank)(7),(8)に焦点を当て,スパースモデリングと凸最適化アルゴリズムの観点から畳込みネットワークを読み解く(1)~(6).結果として,解釈性や説明可能性の向上に役立つ事実を積み上げ,応用に適したネットワーク構造の設定や教師データに応じた学習法など領域知識を反映した画像復元の系統的・戦略的なアプローチを解説する.
本稿では,個の実数値から成る画像をユークリッド空間内の列ベクトルとして扱う.図1に本稿で扱う復元問題の概略を示す.原画像が劣化を受けて観測画像となる様子を示す.画像復元は,観測画像から原画像の推定を得る処理である.図中のは画像を生成するための基本的な波形から成る行列で,本稿ではを合成辞書と呼ぶ.は画像をその基本的な波形の重み付け和で表現するために利用される.はその重みを要素として持つベクトルである.本稿ではを係数ベクトル若しくは単に係数と呼ぶ.合成辞書と係数ベクトルについては4.で改めて説明する.
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