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テレビで放送されるスポーツイベント等の国際中継,特に欧州・日米間等,標準のフレームレートが異なる地域間のそれでは,通信事業者または放送事業者等が,TV方式変換装置を介したフレームレート変換を行っている.
高画質なフレームレート変換処理を行うためには,動き補正フレーム内挿が必要である.動き補正フレーム内挿のための動き推定は,圧縮符号化におけるそれと比べ,誤推定による画質への悪影響が大きい.そのため,なるべく正確な動きを求める必要がある.と同時に,本質的に動きが定義できない領域(アンカバードバックグラウンド等)では,画質劣化が目立たないよう,いかに内挿処理を行うかが重要となる.
近年では伝送帯域の大容量化及び映像符号化技術の進展により,伝送時の圧縮符号化劣化は小さくなる方向にあると言える.このため,伝送画質劣化全体を考えた場合,フレームレート変換による劣化の抑止がますます重要になっていると言えよう.
本稿では,このように近年一層重要性を増している映像フレームレート変換技術の動向を紹介する.
以下,2.でテレビジョン国際中継の映像伝送チェーンの例について説明した後,3.でフレームレート変換の処理方式の変遷について概観する.動き補正フレームレート変換について4.で詳述した後,今後の展開の可能性として期待される深層学習を用いたフレーム内挿方式について,5.でその動向を説明する.6.でまとめる.
海外のスポーツイベント等のテレビジョン国際中継放送の構成の一例を図1に示す.(説明のため単純化している.)現地放送局により撮影された映像は,ディジタル圧縮符号化した上で通信事業者により専用線で伝送される.日本で受信後に圧縮復号しベースバンド映像とし,フレームレートが異なる場合にはフレームレート変換を行ったあと,放送局に送られる.放送局で必要な編集・処理を行ったのちに,再度圧縮符号化されて各家庭に向けて放送される.放送時の圧縮符号化は,日本の地上・BSデジタル放送ではMPEG-2,BS4K/8KではH.265/HEVCが使われている.各家庭ではいわゆる「テレビ」で圧縮復号後の映像を楽しむわけだが,液晶テレビでは動きぼけ(1)を防ぐために,フレームレートの倍速ないし4倍速処理が入っていることが多い.すなわち復号後の約60Hzのフレームレートを動き補正フレーム内挿により2倍や4倍にする処理がテレビに内蔵されている.
このように海外からの生中継放送の映像伝送チェーンの事例では,視聴者が映像を見るまでに通常,フレームレート変換処理が最大2回入ることになる.このうちテレビ内の2倍速・4倍速処理は,常に元の2フレームの中間に1枚ないし3枚ずつのフレームを内挿していく処理である.これに対し欧州等の50Hz(フィールドレート)の映像を日米等の59.94Hzにする処理では,元の2フィールド間に補間フィールドを内挿すべき時間的位置(内挿比)が様々である(図2).
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