解説 複数のUAVを用いたインフラ設備点検の自動化に向けた取組み

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 解説 

複数のUAVを用いたインフラ設備点検の自動化に向けた取組み

Automated Infrastructure Facility Inspections Utilizing Multiple Unmanned Aerial Vehicles(UAVs)

宗 秀哉

宗 秀哉 正員 湘南工科大学工学部電気電子工学科

Hideya SO, Member (Faculty of Engineering, Shonan Institute of Technology, Fujisawa-shi, 251-8511 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.10 pp.925-928 2023年10月

©電子情報通信学会2023

A bstract

 農業やインフラ設備点検の担い手が年々減少しており,省人化を行うことができる技術の開発が急務であった.担い手数の減少に対応する技術として,無人航空機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle)が導入されつつあり,大幅な業務改善が期待されている.また,法改正により有人地帯(第三者上空)における補助者なしの目視外飛行(レベル4飛行)が可能となり,住宅地における物流といった新たなサービスも検討されている.本稿では,レベル4飛行時代におけるUAVサービスを安全安心に実現する技術として,渡り鳥UAV(MiUAV: Migratory UAV)システムを提案する.MiUAVシステムは,UAVを収容,充電可能なポートを複数台配置し,そのポートをUAVが渡り歩くことで長距離移動を可能とする.MiUAVシステムを用いることにより,広範囲なサービスを展開できるようになることが期待される.

キーワード:UAV,インフラ設備点検,自動飛行

1.は じ め に

 近年,無人航空機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle)の技術が大きく進化しており,農業やインフラ設備点検への活用が増加している.その市場規模も2027年において5,000億円以上と予測されており,2016年の市場規模と比べて30倍以上の成長が見込まれている.例えばインフラ設備点検では,安全な運用のために各地に配備されている橋りょうや通信鉄塔といったインフラ設備を定期的に点検する必要があるが,高所作業となるため点検者にとって危険な作業となる.少子高齢化による人口減に加えて,危険作業を伴う設備点検者の数が年々減少傾向にあることが問題となっている(1).そこで作業の安全化と点検作業の効率化のため,UAVに搭載されたカメラで撮影することにより代用することが検討されている(2).パイロットは地上でUAVの撮影画像をリアルタイムに閲覧することができるため,UAVを用いることで高所作業を行うことなく安全に点検を行うことができる.インフラ設備点検以外にも,物流や建設現場の施工管理,防災,防犯といった様々なサービスへの展開が検討されており,様々なトライアルに各社が取り組んでいる.

 UAVの飛行は法律により制限がかけられており,離島や山間部等の人が少ない場所における活用が主であった.基本的には人が存在しない無人地帯において,パイロットや補助者からUAVを目視で確認できる範囲での運用に限られていた.一方,2022年12月5日に法改正が行われ,有人地帯(第三者上空)における補助者なしの目視外飛行(レベル4飛行)が可能となった(3).これにより住宅地におけるUAVを用いた宅配サービスといった新たなサービス展開が可能となる.

 これまでは無人地帯での運用であったため,レベル4飛行を行うためには今まで以上にUAVの安全対策技術が必要となる.安全対策技術として,運航管理システムや衝突回避技術,遠隔識別技術等が検討されている(4).運航管理システムは,航空機と同様に,複数のUAVの飛行計画や運航状況を把握し,安全な飛行経路を管理する.運航管理システムで把握しきれない植生や建築物といった障害物を回避するため,センサを具備したUAVがリアルタイムに障害物を把握し,自律的に回避する機能が必要となる.更に,飛行中のUAVを遠隔から識別するためにリモートIDの搭載が2022年6月20日から義務付けられており,UAVの登録情報や位置情報といった内容を定期的にブロードキャストする必要がある.また,UAVはバッテリー容量により飛行可能な時間や範囲に制約がある.異常時に安全に帰還可能とするためには,長時間の飛行を可能とする技術開発も必要となる.


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