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Vol.106 No.10 (2023/10) 目次へ

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 * 技術が身近な生活を変えていくときには,便利さと同時に何かが失われる不安な気持ちが沸き起こることがあります.私が最近そう感じたのは,大規模言語モデルのAIとチャットしたときです.流暢な回答に驚かされると同時に,大袈裟かもしれませんが,AIが提供する答えは,個々人の揺らぎを削ぎ落した個人を超えた普遍的な答えで,それを追い求めることが正しい,という価値観に自分がなっているのでは?というような不安を感じました.

 * そう言えば,最近はタイムパフォーマンス(タイパ)を重視して動画像コンテンツを早送りで見る人もいると聞きます.私自身も重要な部分以外をちゃんと見ることにストレスを感じ部分的にタイパ視聴をすることがあります.この場合も,枝葉をそぎ落としたものに個人を超えて普遍的な価値があり,それを追い求めることが正しい,という価値観が背景にあるように思います.いずれも自分という存在は意味がなく,情報を透過させていくスループットだけが求められているような切なさを感じます.「AIが人間を超越する」ということに懸念や不安が語られることが多いですが,それ以前の問題として「ネット上の価値が個人をむなしくする」ということに私は不安を感じているのかもしれません.

 * こんなことを考えていると「目にうつる全てのことはメッセージ」(荒井由実作詞「やさしさに包まれたなら」より)という歌の一節を思い出しました.AIやタイパ視聴を通して情報と付き合っていくには,ときに,この歌詞にあるように自分自身のまなざしを通して物事を見ることが大切なのかもしれません.

(編集理事 橋本俊和) 


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