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「共生社会」実現に資する「誰でも参加」の学会・研究会を共につくろう
――「論文作成・発表アクセシビリティガイドライン」の活用――
編集チームリーダー 布川清彦 若月大輔 酒向慎司
論文作成・発表アクセシビリティガイドライン(以下,ガイドラインと呼ぶ)(注1)は,障害のある人々の積極的な社会参加,学会への参加を促進することを目的とし,2005年にヒューマンコミュニケーショングループ(HCG)内に設置された情報保障ワーキンググループによって初版が作成された.ガイドラインでは,視覚障害者に配慮した論文と発表資料作成の注意点や,情報保障を必要とする方が研究会に参加されるときに必要な配慮や情報保障を実施する際の段取りなどがまとめられており,研究の発表者や参加者に加えて運営側にも役立つものとなっている.
現在,基本的なアクセシビリティの考え方は変わっていないものの,オンライン研究会などが開始され,これまでにない状況でのアクセシビリティの配慮が必要になってきたほか,発達障害をはじめとして多様な特性を持つ人が研究活動に関わるようになっている.また,日本が国連の「障害者の権利に関する条約」(注2),(注3)に署名し,国内法の整備を進め「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)(注4)を施行した.この法律によって,障害者が学会や研究会に参加する際に必要な配慮を行うことが義務となった.
このような背景から,現在の時勢に対応した論文作成・発表アクセシビリティガイドラインver.4.0への改定を行った.この小特集では,ガイドライン改定の背景として,(1)障害者差別禁止法と(2)障害支援におけるガイドライン利用の視点となる国際生活機能分類について解説する.その上で,視覚障害,聴覚障害,発達障害のそれぞれの支援について,ガイドラインを引用しながら紹介する.
第1章では,ガイドライン改定の背景として,ガイドラインの誕生から改定までの経緯,障害者差別解消法と合理的配慮について,全体の取りまとめ役である布川清彦(東京国際大学),若月大輔(筑波技術大学),酒向慎司(名古屋工業大学)の3名が紹介した.
第2章では,新しい障害観である国際生活機能分類について,全体の取りまとめ役である布川清彦(東京国際大学),若月大輔(筑波技術大学),酒向慎司(名古屋工業大学)の3名が紹介した.
第3章では,視覚障害への配慮について,宮城愛美氏(筑波技術大学)と池松塑太郎氏(特定非営利活動法人ユニバーサルイベント協会)に紹介して頂いた.
第4章では,聴覚障害への配慮について,全体の取りまとめ役の一人である若月大輔(筑波技術大学)と塩野目剛亮氏(帝京大学)に紹介して頂いた.
第5章では,発達障害への配慮について,苅田知則氏(愛媛大学)と今野順氏(愛媛大学)に紹介して頂いた.
第3章から第5章では,障害の特性や日本における障害の状況と一般的な支援方法を紹介し,ガイドラインを利用した学会や研究会での具体的な支援について解説した.
ガイドラインは障害者が参加する際の指針であるが,同じ障害種別であっても一人一人は違う人間であり,同じ障害種別だからといってそのニーズが同じわけではない.参加する側と運営する側がお互いにとってより良い参加方法を作り上げるためには,何よりも健全なコミュニケーションとしての対話が必要であることを忘れてはならない.
小特集という貴重な機会を与えて頂いた編集委員会に感謝します.
小特集編集チーム
布川 清彦 若月 大輔 酒向 慎司 細野美奈子 黒川 茂莉 齊藤 史哲 福嶋 政期 宮﨑 太郎
(注1) HCG,論文作成・発表アクセシビリティガイドライン,
https://www.ieice.org/~wit/guidelines/index01.html
(注2) 内閣府,「障害者の権利に関する条約」障害者権利条約,
https://www8.cao.go.jp/shougai/un/kenri_jouyaku.html
(注3) 外務省,人権外交 障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約),
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html
(注4) 内閣府,障害を理由とする差別の解消の推進,
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html
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