巻頭言 学び直しの時代における学会の役割

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Vol.106 No.12 (2023/12) 目次へ

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巻頭言

学び直しの時代における学会の役割 The Role of the Society for Recurrent Education企画理事 太田 賢

 私は現在,企画理事として,教育などの会員サービスや会員制度の充実,大会の企画などに取り組んでいます.人生100年時代,ディジタル技術が社会のあらゆる活動に浸透し,仕事に求められるスキルが変わっていく中で,一人一人が学び,スキルを身に付けるリカレント教育の関心が高まっています.リカレント教育は,一度社会に出た人が,再び教育機関や社会人向け講座で学び直すことを指します.特に変化の速い電子情報通信分野では,新しい知識やスキルを習得し続けることが必要不可欠です.

 しかし,リカレント教育には多くの課題があります.時間や費用の制約,教育内容や方法と現場ニーズの適合,潜在的な対象者層へのリーチなどが挙げられます.これらの課題を解決するために,学会はどのような役割を果たすべきなのか考えたいと思います.

 第1に,学び直しに関心のある人々に向けて,最新の技術動向を反映した,実践的な教育プログラムを開発し,提供することが重要です.対象者のニーズや知識には幅があるため,基礎から学べ,発展的な内容までカバーすることが望ましく,オンラインから参加できる手段もあるとアクセス性が高まります.本会のWebinarコンテンツとしては,電子情報通信分野の第一人者の御協力の下,IEICE ICT Pioneerシリーズ,チュートリアル/テクノロジートレンドシリーズ,それらのアーカイブをパッケージ化した全集中コースが提供されています.また,「電気・電子系高度技術者育成プログラム」はものづくりの技術者に向けた実践的な半年のコースであり,対面・オンラインのハイブリッド開催です.更に新たにAIや量子コンピュータについてオンデマンド動画で学べるIEICE先端セミナーを準備しています.会員の皆様にはこれらの教育プログラムを活用するとともに,その開発と改善にも引き続き御協力をお願いしたいと思います.

 第2に,会誌やWebサイト,SNSなどのメディアを活用して,リカレント教育に関する最新情報やネットワークを提供することも重要です.学び直しに関心を持つ潜在的な対象者にリーチするためのマーケティングやプロモーションも必要でしょう.2023年1月から,本会の活動に興味ある方であればどなたでも登録可能なアソシエートメンバー制度を開始し,より広い層への情報発信を始めています.9月のソサイエティ大会ではIEICE EXPOと銘打った企業展示,魅力ある各セッション,懇親会も盛況でしたが,学会の価値の一つは交流の場の提供であることは間違いありません.学び直しに関心のある人々が交流や協力できるような場にしていくことが求められます.

 第3に,リカレント教育を受ける人々のニーズや意見を更に聞き,教育プログラムの開発,運営に反映することも大切です.アンケートやインタビューなどを活用して,教育内容や方法についてのフィードバックの獲得や教育効果の評価を通じて,教育プログラムのアップデートや企画に活用することも重要でしょう.受講生,教育サービス提供者,他学会など複数の視点の意見を取り込むことでより効果的なものにしていけることと思います.

 リカレント教育は,個人の自己実現や社会変化への対応にとっても,我が国の生産性や競争力を更に向上し,成長を遂げるためにも不可欠な要素です.本会が学び直しの支援に積極的に取り組むことで,会員の皆様及び社会に更に貢献できると信じています.


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