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無線ディジタル化れい明期でのPLLの研究
Research Status of PLL in the Early Days of Digital Radios
大学で一通りはアナログ回路の勉強はしたつもりだったが,入社後は教科書と実際とは大きく違うということの連続だった.筆者の最初の担当は電子交換機の加入者につながるアナログ集積回路だった.実際に回路に使用するオペアンプ(用語)を設計して試作してみると,集積されたトランジスタの特性がそろっていたので差動性がかなり良かったことが驚きだった.一方,フリッカ雑音(用語)レベルとオフセット電圧(用語)の温度依存はかなり大きいということも分かった.このように新たな課題が明確になることで,常に新鮮な感動をもって働いていたことが記憶に残っている.
そして数年がたち,電子交換機用集積回路(1)の開発が一段落したときに,位相同期回路(PLL: Phase Locked Loop)(用語)を担当することになった.PLLという機能ブロックへの筆者の当時の印象は,野球で例えれば“バント”のようなものである.正しく動いて当然,動かないとPLLは他のブロックへのクロック供給が大きな役割の一つなので集積回路全体の検証が行えず,かなり迷惑をかけることになる.言い換えれば,誰も引き受けたくない機能ブロックという認識だった.多分,PLLを担当したことのある皆さんは同じような思いを抱いているのではないかと思う.
時代は昭和から平成に移り,携帯電話という新しいツールが進歩を遂げようとしていた.最初は主に自動車に搭載されていたので自動車電話と呼ばれていた.そして次第に小形化され.ショルダーサイズの可搬電話から背広のポケットに収められる携帯電話の開発が始まった.最近ではスマホが全盛で,旧式の携帯電話は“ガラケー”と呼ばれ,絶滅危惧種のような扱いになってしまったが,電波を使う通信の原理は同じである.
図1に携帯電話の利用シーンを示す.携帯電話からの通信は,携帯電話と基地局にそれぞれ割り当てられた電波の周波数を利用して通信する.ここでPLLは通話するための電波の基準となる周波数を発生する周波数シンセサイザ(用語)という機能を担う.PLLが細かい間隔で周波数を安定に供給することにより,利用できるユーザ数を拡大できた.
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