知識の森 知識ベース「知識の森」を会誌に掲載します

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.106 No.4 (2023/4) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


知識の森

「知識の森」新設にあたって

知識ベース「知識の森」を会誌に掲載します

ハンドブック/知識ベース(HB/KB)委員会
委員長 森川博之

本会ハンドブック「知識の森」

https://www.ieice-hbkb.org/portal/doc_index.html

 僕が学生の頃,研究室には電子情報通信学会の「電子情報通信ハンドブック」「データ通信ハンドブック」「ディジタル信号処理ハンドブック」「情報ネットワークハンドブック」などの分厚い書籍が書棚に並んでいました.オックスフォードの英英辞典と同じような分厚さで,情報通信分野の奥深さを垣間見ました.分厚い直方形の書籍だったため,「台」としても重宝しました.

 ハンドブックは長い歴史を有しています.1926年には「通信工学ポケットブック」が,戦時下の1944年には八木アンテナの八木秀次委員長の下で「通信工学大鑑」が発刊されています.

 知識ベース「知識の森」はこれらのハンドブックのWeb版です.基になったのが,1998年出版の「エンサイクロペディア電子情報通信ハンドブック」です.それまでの分野ごとのハンドブックではなく,電子情報通信学会が網羅する学術分野の知識を体系的にまとめたものです.129編を9群に整理した1,354ページの大作です.

 1998年は数kgあるノートパソコンを公衆電話のモジュラージャックに接続し,ダイヤルアップでインターネットに接続する時代でした.直後の1999年にはiモードが登場し,2001年にはYahoo! BBがサービスを開始して,一気にインターネットの時代に突入しました.

 このような時代背景の下,2000年代前半のハンドブック委員会では,「エンサイクロペディア電子情報通信ハンドブック」の次をどうするのか大きな議論項目だったと思います.Web版にすると,今までの紙版の収入がなくなりますので,出版産業や音楽産業と同じような議論が当時の委員会で繰り広げられていたはずです.そして,紙版を廃止してWeb版ハンドブック「知識ベース」を構築することが2000年代半ばに提言されました.

 これを受けて,2011年に一般公開したのが知識ベース「知識の森」です.当時のハンドブック/知識ベース委員会の原島博委員長のリーダーシップの下に構築した日本で最初のWeb版ハンドブックです.特に重要なトピックをS群として四つにまとめ,全18群140編で構成されています.学会の社会的な貢献及び執筆者のインセンティブ確保の観点から,会員・非会員の区別なく一般公開しました.

 僕は2015年からハンドブック/知識ベース委員会に関わるようになりましたが,そのときの委員会の大きな仕事は,原稿督促でした.2011年に一般公開したものの,まだ原稿を頂けていない方がおられたためです.連絡がとれなくなった執筆者の方もおられました.

 そこで,知識ベース「知識の森」の更新作業に一旦区切りをつけることにしました.2018年に原稿を未受領の執筆者に対して改めての執筆依頼を一気に行い,2019年3月をもって更新作業を終えることにしました.

 新たな「知識の森2.0」では,「知識の森」に追加する内容を会誌と連動させることとしました.毎号2件(2ページ/件)の記事を掲載し,年間24個の技術項目を取り上げます.今月号は「生理計測を用いた感情推定」「第5世代セルラシステム」の2件です.これらの記事はWeb版の知識の森にも掲載されます.

 定期的に会誌で連載することで,「知識の広がりは日進月歩であるため,必要とされる情報を随時発信していきたい」「執筆者の執筆インセンティブを高めたい」という2点を満たすことができればと考えています.

 巷では生成AIが話題になっています.社会の生産性を向上させ,人の知的活動を活発にする可能性を秘める半面,偽情報の拡散や人の思考意欲が奪われる恐れなどもあります.両刃の剣であるテクノロジーの提供には,責任が伴います.

 このような時代に学会が果たすべき責任は,信頼に足る情報を提供し続けることです.世界の一線で活躍している専門家による記事は,最も信頼できる一次情報です.質の高いコンテンツを提供し続けることは学会としての社会的責任だと考えています.

 掲載記事の技術項目の提案は,ソサイエティ/グループを介して研究専門委員会・特別研究専門委員会の皆様にお願いしています.現行の「知識の森」に欠けている技術項目や,内容が古くなった技術項目をお知らせ頂き,毎年24個の項目の「知識の森」を更新していきます.

 会誌のみならずWeb版の「知識の森」をも御覧頂き,何かお気づきの点等ございましたら,御遠慮なく御意見をお知らせ下さい.デザイン等含め,まだまだ足りない点が多々あろうかと思います.

 Web版の「知識の森」へのアクセスは,おかげさまでそれなりの数があります.しかし,アクセス数がより増えれば,広告収入も視野に入ってきます.捕らぬ狸の皮算用ですが,こういった議論もハンドブック/知識ベース委員会で議論してまいります.会員の皆様のお力添えを頂けるとうれしいです.


オープンアクセス以外の記事を読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。