電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
無線通信システム研究専門委員会
第5世代セルラシステム
第5世代セルラシステム(5G)では,LTE,LTE-Advancedでも考慮されていた「高速・大容量」の観点に加えて,「低遅延・高信頼」「多数の端末の同時接続」「多様な産業のサポート」などの観点も考慮して新たな要求条件を定め,初版仕様が含まれるRelease 15の策定を2018年6月に完了した.
5Gでは,①モバイルブロードバンドの更なる高度化(eMBB : enhanced Mobile BroadBand),②多数同時接続を実現するマシンタイプ通信(mMTC : massive Machine Type Communications),③高信頼・超低遅延通信(URLLC : Ultra-Reliable and Low Latency Communications)でまとめられる利用シナリオごとに,無線アクセス技術の主な要求条件を表1に示すように定めている.
これら要求条件を踏まえて検討した結果,以下の主要機能が合意され,5G NR(New Radio)標準仕様に反映されている.
超高速・大容量伝送を実現するため,52.6GHzまでの高周波数帯を想定して最大400MHzのチャネル帯域幅が規定されている.また,最大16のComponent Carrier(用語)を束ねて超高速伝送を実現するCarrier Aggregation(用語)やDual Connectivity(用語)がサポートされている.
また,マルチアクセス(用語)方式としては,MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)(用語)技術との親和性やマルチパスフェージング(用語)への耐性が高いOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が上下リンクともにサポートされている.更に,高周波数帯における位相雑音(用語)や様々なサービスごとの異なる遅延要求,マルチパス通信環境などに柔軟に対応するため,OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)(用語)におけるサブキャリヤ(用語)間隔として15,30,60,及び120kHzをデータ送受信向けにサポートしている.加えて,上りリンクではカバレージ確保のため,PAPR(Peak-to-Average Power Ratio)(用語)の低いDFT(Discrete Fourier Transform)-spread OFDM(用語)がシングルストリーム伝送時に限定してサポートされている.
高周波数帯において,基地局で最大256,端末で最大32のアンテナ素子を用いたMassive MIMO(用語)伝送を想定した参照信号構成,ビーム制御などの要素技術が規定されている.下りリンク通信向けには最大8レイヤのシングルユーザMIMO(用語)伝送及び最大12レイヤのマルチユーザMIMO(用語)伝送が,上りリンク通信向けには最大4レイヤのシングルユーザMIMO伝送がそれぞれ可能である.
高周波数帯では伝搬損(用語)によるカバレージの減少を補うためにビームフォーミング(用語)技術が重要となる.そのため,特に高周波数帯における初期アクセス,スケジューリング,HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)(用語)などの主要機能は,比較的低コストで実現可能なアナログビームフォーミング(用語)やハイブリッドビームフォーミング(用語)を考慮した標準仕様となっている.
前述のとおり5G NRでは複数のサブキャリヤ間隔がサポートされており,広いサブキャリヤ間隔を用いることでOFDMシンボル(用語)長が短くなる.更に,制御,データチャネルの割当単位を構成するOFDMシンボル数を柔軟に変えることができる.これにより,短時間での伝送が可能になることから,トラヒック発生後すぐに伝送を開始しやすくなり低遅延の達成につながる.また,フレーム構成においては,上下リンク通信のトラヒック比に応じて,上下リンク通信向けの時間リソース比を柔軟に切り換えることができる.
前述のとおり,広いサブキャリヤ間隔の適用やデータ割当に用いるOFDMシンボル数の削減により,低遅延での通信を実現できる.一方,高信頼性の実現に向けて,eMBB向けよりも低い符号化率をサポートできるよう,CQI(Channel Quality Indicator)(用語),MCS(Modulation and Coding Scheme)(用語)テーブルをURLLC向けに新たに規定している.
5G初期導入の段階では,ミリ波帯を含む5G NR用の新周波数を局所的に展開することが想定され,5G NR単独でエリアを提供するスタンドアローン(用語)運用に加えて,LTE/LTE-Advancedとエリアを組み合わせてサービスを提供するノンスタンドアローン(用語)運用がサポートされている.これにより,5G NR単独で局所的にサービス提供するよりも,より利用者に対して安定した通信を提供することができる.
――― 用語解説 ―――
(2022年12月20日受付)
オープンアクセス以外の記事を読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード