特集 2-3 衛星を含めた宇宙での通信実現に関する取組み

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特集2-3 2.宇宙/衛星通信
衛星を含めた宇宙での通信実現に関する取組み
Development for Providing Communication in Space Including Satellites
高橋 幹 大河亮介 伊藤 直 松ケ谷篤史 村田 靖 新保宏之 市村周一

高橋 幹 正員 (株)KDDI総合研究所フロンティア研究室

大河亮介 KDDI株式会社先端ネットワーク企画室

伊藤 直 KDDI株式会社宇宙・衛星技術企画室

松ケ谷篤史 KDDI株式会社先端ネットワーク企画室

村田 靖 KDDI株式会社宇宙・衛星技術企画室

新保宏之 正員:シニア会員 (株)KDDI総合研究所電波応用グループ

市村周一 KDDI株式会社技術戦略本部

Tsuyoshi TAKAHASHI, Member (Frontier Innovation Laboratory, KDDI Research, Inc., Tokyo, 105-0001 Japan), Ryosuke OOKAWA, Atsushi MATSUGATANI, Nonmembers (Advanced Network Office, KDDI Corporation, Tokyo, 102-8460 Japan), Naoki ITO, Yasushi MURATA, Nonmembers (Space Satellite Office, KDDI Corporation, Tokyo, 102-8460 Japan), Hiroyuki SHINBO, Senior Member (Advanced Radio Application Laboratory, KDDI Research, Inc., Fujimino-shi, 356-8502 Japan), and Shuichi ICHIMURA, Nonmember (Technology Strategy Division, KDDI Corporation, Tokyo, 102-8460 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.5 pp.382-387 2023年5月

©電子情報通信学会2023


本会誌では,用語は①文部省(文部科学省)学術用語集電気工学編,②本会編の改訂電子情報通信用語辞典,③本会編のエンサイクロペディアハンドブック,に基づき統一している.「小型」は上記①~③に従うと「小形」であるが,本稿では著者の希望により「小型」と記述する.

abstract

 衛星通信は,これまで地上のネットワークではカバーできない海上,山間部,島しょ部などの利用に限られていたが,近年は衛星コンステレーションによる衛星通信サービスが始まっており,スマートフォンと低軌道衛星の直接通信など,地上網と衛星通信網の連携が進んでいる.また,地球上だけではなく,深宇宙,特に衛星を活用した月面通信の実現への取組みも進められている.本稿では,衛星通信事業者と携帯電話事業者の連携に関する動向や,月面でのインターネット利用を実現するための課題について,紹介する.

キーワード:衛星通信,コンステレーション,月面通信,深宇宙

1.衛星通信の変遷

1.1 従来の衛星通信

 衛星通信が登場する前,海を越えての国際電気通信は1851年に初めて英仏間の海底電信ケーブルが敷設されたときから始まり,その後長波・短波通信が主流の時代が続いた.衛星通信の構想が発案されたのは,1945年のことである.アーサー・C・クラークがWireless World誌にて,地上3万5,800km上空に静止衛星3機を等間隔に配置すれば,極域を除く全世界をカバーする衛星通信が実現できることを示唆した.1957年には世界初の人工衛星であるソ連のスプートニク1号の打上げが成功し,1960年に米国で初の通信衛星としてエコー1号による実験が行われた.日本では,1963年にKDD茨城宇宙通信実験所にて,リレー1号による初の太平洋横断のテレビ衛星中継が行われた.その際には,衛星を通してケネディ大統領の暗殺が日本に報じられた.

 そして,国際間の固定衛星通信のため,日本を含む11か国が参加する国際機関としてINTELSATが1964年に発足した.翌年,大西洋上のアーリーバード衛星を用いた初の商用衛星通信が実現した.日本では,INTELSATのインド洋上の衛星との通信のため,1969年にKDD山口衛星通信所が開設された(図1,現KDDI山口技術保守センター(1)).2001年の民営化を経て,現在も南極昭和基地や米欧,アフリカ,アジアなどとの衛星通信サービスや映像伝送サービスに活用されている.

図1 KDDI山口技術保守センター


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