ニュース解説 超伝導磁束量子ビットによる神経細胞の磁化測定

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Vol.106 No.7 (2023/7) 目次へ

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◆今月のニュース解説

 超伝導磁束量子ビットによる神経細胞の磁化測定

 ――微量金属元素の定量が単一細胞レベルで可能に――

 Magnetization Measurement of Neurons Using a Superconducting Flux Qubit: Quantitative Analysis of Trace Elements at a Single Cell Level

超伝導磁束量子ビットによる神経細胞の磁化測定

――微量金属元素の定量が単一細胞レベルで可能に――

 日本電信電話株式会社は静岡大学と共同で,超伝導磁束量子ビットを磁界センサとして用いて神経細胞中の鉄イオンを検出した.

 生体中の微量金属元素の分析に多く使われる手法として電子スピン共鳴が挙げられる.電子スピン共鳴は,磁界を印加した試料にマイクロ波を照射し,その磁気的な応答から試料を評価する手法である.従来の手法では,1,013個程度のスピンを含むミリリットル程度の体積の試料が分析に必要であり,得られる結果は試料全体を平均したものであった.したがって,細胞組織のイメージングや,個々の細胞の分析は難しかった.

 超伝導磁束量子ビットは,基底状態と励起状態の間の遷移エネルギーを外部磁束により制御する.量子ビット近傍に貼り付けた試料の磁化を制御磁束とみなすことで,超伝導磁束量子ビットをマイクロメートルスケールの高感度磁力計として用いることができる.これまで,研究グループでは,光学結晶中のエルビウムやダイヤモンド中の窒素―空孔欠陥など,固体中の不純物スピンに由来する磁化や電子スピン共鳴スペクトルを測定してきた.磁束量子ビットは外部磁界に対して極めて敏感であり,スピン感度として20スピン(1秒の積算において)を達成した.また,磁束量子ビットのサイズから数µmの空間分解能が得られた.今回の成果は,この高い感度と空間分解能を生体試料の計測に応用し,単一細胞レベルの空間分解能での磁化測定を実現したものである.


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