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私は現在,学会の運営と組織強化を担当する副会長を務めています.取り組むべき最大のミッションは,現在から将来にわたって学会の価値を最大化することだと考えています.
学会の価値とは何でしょうか? ここでは以下を挙げたいと思います.情報提供と指導(技術及び研究開発の方法など),評価(査読や選奨など),学会が持つ知的資産の管理と活用,持続性があるコミュニティの提供と運用,つながりの契機を提供する場の設定,公的な発信などです.これらは学会が提供する価値であると言ってもいいでしょう.
それでは,会員が学会から受け取る価値は何でしょうか? 上に挙げた言葉を繰り返すのではなく,より直截的に考えてみます.個人会員にとっては,研究者や技術者として知見を獲得し成長すること,それらが自己のキャリア形成に貢献することが大きな価値となるでしょう.法人会員にとっては,自組織の会員を通じたプレゼンスの向上や,学会を通して得た技術を活用して自社事業を成長させることが大きな価値となるでしょう.更に直截的に言えば,学会に対するボランティア活動や会費に見合う価値でなければなりません.
学会が提供する価値と,会員が受け取る価値または求める価値が一致するとは限らないと考えています.学会は,会員により明確な価値を提供すること,会員自身が求める価値を実際に受け取れること,にもっと意識を向けるべきだと考えています.現在自分もその一員である学会役員は会員でもあり,価値を受け取る側でもあります.それなのに自分は提供者目線になっていないか,受け取る側の目線を理解しているか,と自問しています.
現在,価値を提供する方法を模索し,改善しようとする試みが幾つかなされています.例えば,論文の多言語化による国際化やインパクトファクターの向上,企業イニシアチブによる産業価値の創出を図る活動はその一部です.また,新しい分野にフットワーク軽く取り組める研究コミュニティの在り方,そうした活動を支え,学会での成果を社会により広く知らしめる仕組みなどについても議論を深めねばなりません.学会への貢献に対するリターンも真剣に考えるべきでしょう.これらの施策を,まずは可能な限り実施・試行するのがよいと考えています.
重要なのは,実施・試行の中でフィードバックを得て,適宜修正を加えていくために,学会と会員とのコミュニケーションを緊密にすることです.どの施策をどう取捨選択ないし修正するのがよいか,価値を受け取る側の会員の視点が不可欠です.御意見を伺うばかりでなく,施策の意図を共有し,フィードバックやコメントを得る機会や仕組み作りもこれまで以上に必要と考えています.
学会運営においては,常に改善と進化が求められます.いつの時点でも,学会が提供できる価値と会員が受け取れる,求めている価値を考え,改革を続けなければなりません.変わり続けなければ学会の存続すら危ういと感じています.本稿では価値を提供する側と受け取る側を対比的に書き過ぎたかもしれません.対比的にならないよう,現在から将来にわたって当事者である,つまり価値を提供し,受け取る両方の方々が学会の方向性決定に深く関わって頂く仕組みを作ることが必要だと考えています.
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