小特集 セルフリー通信技術の最新動向 小特集編集にあたって

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Vol.106 No.9 (2023/9) 目次へ

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小特集

セルフリー通信技術の最新動向

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 吉井一駿

 5G(第5世代移動通信システム)の普及が世界的に進み,今後の展開や活用について広く議論が行われている.我が国でも2020年3月に5Gの商用サービスが開始された.5GやLTEをはじめとする現行の移動通信システムは,基地局を中心とするセル(Cell)を基本単位として通信システムを構築していることからセルラ方式と呼ばれる.セルフリー(Cell-Free)通信技術はこれまでのセルラ方式とは異なり,物理的に離れた多数のアンテナ(アクセスポイント)から一つの通信エリアを形成することで,高品質なネットワークの実現を目指すものである.5Gの次の移動通信システムであるBeyond 5G/6Gの時代へ向けて,積極的な研究開発が行われている分野の一つである.

 セルフリー通信の実現により,従来のセルラ方式における課題の一つであるセル間干渉の解消や,柔軟な無線ネットワーク構成の実現による通信の高品質化,多様な通信要件への対応の実現などが期待されている.一方で,実現に向けて様々な技術課題の解決が欠かせない.一つの通信エリアを形成するために物理的に離れた複数のアンテナを必要とすることに加え,フロントホールにおける通信容量制約の問題や無線ネットワークトポロジーの動的な変化に対応した制御の必要性なども考えられることから,無線アクセス技術とともに基地局間の連携や協調制御技術の更なる高度化が求められている.更に,将来的な伝送路資源の変化に対応できる柔軟なシステム構成の実現と低コスト・低消費電力化の実現など今後の展開に向けた課題も多い.Beyond 5G/6Gの時代にはミリ波やテラヘルツ波をはじめとする高い周波数の電波の活用が期待されているが,これらの電波は直進性が高く遮蔽物の影響を大きく受けるため,見通しの確保をはじめ電波伝搬の観点からも解決すべき課題が存在する.

 本小特集では,これらの技術課題や研究開発動向,標準化動向に加えて実証実験などの取組みについて紹介する.また,実用化に向けた課題や今後の展開などの将来展望について議論する.1章ではセルフリー通信技術全体を俯瞰的に紹介する.セルフリー通信の概説や要素技術,最新の研究動向について示すとともに,ネットワークアーキテクチャや標準化動向について紹介頂く.2章では分散アンテナ技術に焦点を当て,超高密度分散アンテナ技術や基地局共用技術,動的ネットワーク制御技術,サブテラヘルツ波分散MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術の解説を中心に各要素技術を紹介頂く.3章では高密度な無線基地局展開へ向けたA-RoF(Analog Radio over Fiber)技術と既設の光ファイバ網の活用を念頭においた遠隔ビーム制御技術について具体的な検討状況と伝送実験の結果について解説頂く.4章では無線ネットワークトポロジーの動的な変化に追従するための無線アクセス技術として分散MIMO技術,無線中継技術,反射板技術を中心に実証実験の結果やシミュレータによる評価について紹介頂く.

 最後に,御多忙な中,執筆に御尽力頂いた著者の皆様に深く感謝申し上げます.また,小特集編集チーム及び学会事務局の皆様には本小特集の提案・調整・編集作業に多大な御協力を頂きました.この場をお借りして深く感謝申し上げます.

小特集編集チーム

 吉井 一駿  服部 恭太  伊神 皓生  澤田 政宏  筒井 正文  村上 友規 


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