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通信障害と社会
編集チームリーダー 石橋圭介
近年,通信ネットワークにおいて大規模通信障害が散発しており,社会問題となっている.社会インフラである通信ネットワークは障害発生時の影響が多大であるため通信障害の発生は最大限回避されるべきであり,本会でも通信ネットワークの信頼性向上については活発に研究開発が行われている.一方,人為的ミスや機器障害,及び外部要因によっても発生し得る通信障害をゼロにすることは一般的に不可能であると考えられる.通信障害の社会問題化を防ぐアプローチとしては,その信頼性向上に向けた努力はもちろんであるが,それに加えて通信障害発生時の社会的影響やリスクを抑制するアプローチ,どの程度のリスクを許容し得るかという社会的コンセンサス作りに向けたアプローチなども重要と考えられる.通信に関わる学会として,研究開発に加えて,そのようなアプローチの整理・提言を行うことも一つの役割であろうという意図の下に本小特集は企画された.3名の執筆者には企画意図を御理解頂き,快くお引き受け頂いた.
まず1章では谷脇康彦氏(IIJ)に,今後の通信障害対策の在り方について包括的に整理頂いた.近年の通信ネットワークの構造的変化により伝統的な無謬主義からリスク管理主義への移行が必要であり,後者のリスク管理の在り方として外的要因を扱う機能保証と内的要因を扱う信頼性向上の二つの取組みが考えられると示唆頂いた.また,発生する障害が社会的に許容範囲内に収まっているのか,社会全体のコンセンサスを得ながら丁寧なルールづくりを進めていく必要を述べて頂いている.
続く2章では中尾彰宏氏(東京大学)に,サイバーインフラに対する研究開発の必要性を提言頂いた.研究開発の方向性として(1)「堅ろうな情報通信インフラ」の構築,(2)Non-Terrestrial Networkを駆使した地上の情報通信インフラが不通となった際の通信手段の確保,(3)AIや機械学習を活用した障害予測・障害検知を行う情報通信技術の3点を挙げられた.また本会の取組みとして,2023年3月に開催された第39回ネットワークシステム・情報ネットワーク研究ワークショップ「社会基盤としての情報通信」の議論内容やパネルの結論を紹介頂いた.
最後に3章では堀越功氏(日経BP)に,昨今の通信障害の傾向や,それに対する総務省の新たな対策を概括頂いた.特に通信事業者に対して,社会インフラを担う企業としてのアカウンタビリティ(説明責任)の重要性及び通信ネットワークのリスク低減とコストのバランスについての社会的コンセンサス構築の必要性を提言頂いている.
最後に,御多忙な中執筆に御尽力頂いた著者の皆様に深く感謝申し上げます.また,本小特集編集チーム及び学会事務局の皆様には本小特集の提案・調整・編集作業に多大な御協力頂きました.この場を借りまして深く感謝申し上げます.
小特集編集チーム
石橋 圭介 内田 真人 原田 薫明 水越 一郎 佐波 孝彦
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