解説 デリバリーロボットの技術動向

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.107 No.10 (2024/10) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


 解説 

デリバリーロボットの技術動向

Technology Trends of Robot-delivery Systems

花野博司 稗圃泰彦

花野博司 KDDI株式会社先端研究開発本部

稗圃泰彦 正員:シニア会員 KDDI株式会社先端研究開発本部

Hiroshi HANANO, Nonmember, and Yasuhiko HIEHATA, Senior Member (Advancing Technology R&D Division, KDDI Corporation, Tokyo, 102-8460 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.10 pp.955-960 2024年10月

©2024 電子情報通信学会

A bstract

 近年,運送業界においてドライバー不足による輸送力の低下が喫緊の課題であり,解決策の一つとして,デリバリーロボットによる運送や配送の自動化の期待が高まっている.これまでに飲食業界をはじめ,店舗内などで局所的な活用に特化した垂直統合型のロボットシステムの導入が進んでおり,今後は,プラットホームによる機能の共通化が進み,様々な場所で異なるロボットが効率的に活用される水平分離型のロボットシステムも普及すると考える.本稿では,デリバリーロボットの基本的な構成要素を整理し,垂直統合型及び水平分離型ロボットシステムのアーキテクチャの特徴を事例を交えて解説する.

キーワード:配送ロボット,マルチロボット,RaaS(Robot as a Service),設備連携

1.は じ め に

 近年,飲食業界を中心に自律走行ロボットの活用が進んでいる.ファミリーレストランでロボットがホールスタッフに交じって配膳や下膳を行う姿を目にされた方も多いだろう.国内の火付け役となったファミレスチェーン最大手のすかいらーくホールディングスは,新型コロナウイルス感染予防のための非接触や人手不足の解消を狙い,2021年に先駆けて約2,000店舗への配膳ロボットを導入,従業員の労働負荷の削減に効果を上げている(1)

 同様に運送業界でも人手不足をロボットにより解消する試みが進められている.少子高齢化による担い手不足に加え,2024年4月に施行された働き方改革関連法による時間外労働の上限の設定を受け,このままでは2030年度には約34%の輸送力不足が生ずる(2024年問題)(2).本課題に応えるべくラストワンマイル配送を自律走行ロボットにより自動化するための研究開発や社会実装が積極的に進められている.

 近年のロボットシステムでは単にロボットが走行するだけでなく,携帯電話網などのネットワークを介して管制システムやエレベータなどの設備と協調して動作することが一般的である.ロボットシステムのアーキテクチャは2種類に大別でき,配膳ロボットのように特定のフィールド(レストラン)と特定の用途(配膳)に限定し少数プレーヤで構築する形態を垂直統合型と呼び,ロボットの経路計画や上位サービスとのインタフェースなどの共通的な機能をプラットホームとして提供しサービス,プラットホーム,ロボットのようにレイヤに分ける形態を水平分離型と呼ぶ.現在は垂直統合型システムが主流であるが,筆者らは将来的にはロボットの活用範囲の拡大が容易な水平分離型システムに移行する可能性が高いと考える.

 本稿では,特に宅配用途のデリバリーロボットにフォーカスし,その技術動向を解説する.2.でロボットシステムの構成要素とその組み合わせ方の例として垂直統合型・水平分離型の基本的なアーキテクチャや特徴,事例を示す.更に,3.で水平分離型を導入する上での課題や筆者らの取組みについても紹介する.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。