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2024年6月から,電子情報通信学会では,森川前会長主導の下,情報通信エンジニアリング準備委員会の活動が動き出しました.通信は社会を支える重要インフラとなり,社会と経済全体の生産性向上に貢献しています.通信インフラを支える情報通信エンジニアリングの方々が主役となる場を作ることが本準備委員会の目的です.本準備委員会での議論を通して,学会の魅力について,改めて感じたところがありました.
新領域の委員会ということもあり,技術テーマやイベントなどの活動について,活発に議論されています.本活動を通して,委員会メンバが,企業の垣根を越えて,仲良くなり,尊敬し合う間柄に変化していると感じます.そのような関係性が構築されてきた今,本活動の中で,どこまで自社の技術を出していいかと悩むときがある,との話がありました.その場にいた理事たちからは,自社のことを考えるとグレーな部分はあるが,他社との交流により新しい気付きが得られ,自社に戻り,また発展させていく過程が楽しいとの話をされました.
同じテーマ,同じ分野で活動しているけれど,競争相手でもあります.しかし,同じ課題を抱えており,学会や研究会での発表に対して,意見やコメントを出し合ってきました.学会や研究会という場では,人間の本質的なところで,「私たちの追求する技術や学問は,より良い社会にしていくために必要」という共通善をベースに活動しています.そこには競争相手という立場を超えて,共通の技術をより良くしていきたいという,心構えが自然とできています.だから私は学会や研究会に足を運び,技術について議論したいと思うのだ,と改めて学会の魅力を振り返った瞬間でした.
2024年3月の総合大会での情報通信エンジニアリングの特別企画セッションでは,能登半島地震の通信インフラの復旧についての貴重なお話がありました.被災時には緊急通報や安否確認等に係る通信,また警察や防災通信等の基本的な重要通信の確保が強く求められています.共同で船上基地局を運用するなどというように,各社が競争という立場を超えて,自然の脅威と戦いながら,協力し合い,通信の早期復旧や確保を目指した活動に感動しました.通信に少しでも携わる者として,誇らしい気持ちになりました.
2023年度のIMD「世界競争力年鑑」では,日本の順位は35位と毎年下がり続けています.その中で「科学インフラ」の順位は比較的高く,その中に含まれる研究開発支援や研究開発人材,論文数,特許数は1桁台の順位です.研究開発により得られた強い知識を生かす仕組みの整備が不十分であるという課題があります.今,研究だけで終わらず,社会への実装が求められている背景です.
情報通信エンジニアリング部会から出てくる課題は,社会課題であり,社会を大きく変える可能性があるでしょう.通信インフラを支える技術の知識の共有や課題の研究を進めることは価値が高いと思います.また情報通信エンジニアリングから出てくる課題を現ソサイエティが解決できることもあるでしょう.新領域が加わることで,本会全体の活性化が行われ,知の循環が実社会にも更にうまく回っていくことを期待します.私も学会の場を使いつつ,様々な人との交流により,社会をより良くしていくことに時間を使っていきたいと思います.
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