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実用化が迫る空間伝送方式ワイヤレス電力伝送システムの進展と展望
編集チームリーダー 丸田一輝
空間伝送方式無線電力伝送(WPT, Wireless Power Transfer)は,無線(電磁波)で電力をデバイスに送る技術であり,その実用化が進んでいる.2022年には日本国内で920MHz,2.4GHz,5.7GHzの三つの周波数帯で制度化が行われ,構内無線局としての運用が認められた.これにより,屋内や閉空間での安全な電力供給が可能となり,実用化が加速している.また,24GHz帯,28GHz帯といった新たな周波数帯を用いたシステムの開発も進められている.WPTは,バッテリー交換の負担を軽減し,IoT機器やモバイル端末の使用の利便性向上に寄与するとされている.今後の技術的進展により,Beyond 5Gや6Gとの連携が進む中で,完全無線社会を支える重要な技術となることが期待されている.
本小特集は,国家プロジェクトを中心に共同で取り組まれている企業・大学からそれぞれの研究開発をリードする研究者・技術者に最先端の取組みを紹介頂く.システム,各周波数帯,要素技術,制度化・標準化,高度化技術といった,空間伝送方式WPTについての最新動向を網羅的に把握し,理解を深めることのできる非常に価値のある小特集となった.第1章では,空間伝送方式WPTの国内外における制度化・標準化の最新動向について全体像を俯瞰できるよう丁寧に解説されている.第2章では,920MHz帯WPTの要素技術や適用例,標準化と制度化の動向を取り上げている.第3章では,アンテナ・伝搬の基礎にも触れながら2.4GHz帯及び5.7GHz帯におけるWPTの概要並びに社会実装に向けた取組み状況が紹介されている.第4章では,5.7GHz帯WPTシステムにおけるビームフォーミング機能や既存無線システムとの共存技術,そして小形化・高効率化に向けた取組みが紹介されている.第5章では,準ミリ波帯である24GHz帯を利用したWPTシステムの実用化に向けた研究開発としてアンテナや増幅器等の要素技術を詳述している.第6章では,Beyond 5G/6G時代におけるミリ波通信とWPTの融合技術について触れ,通信と電力供給の統合を目指したシステム開発が論じられている.第7章では,メディアアクセス制御に着眼した新たな給電方式を基に,無線電力伝送の効率化や情報伝送端末との共存方式が紹介されている.
最後に,御多忙な中,執筆に御尽力頂いた執筆者の皆様に深く感謝申し上げます.また,小特集編集チーム並びに学会事務局の皆様には本小特集の校閲・編集作業に多大な御協力を頂きました.この場をお借りして御礼申し上げます.
小特集編集チーム
丸田 一輝 中川 雅弘 小河原健生 久世 竜司 島﨑 智拓 西岡 隼也 平賀 健 武藤 勇太 山之内慎吾
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