巻頭言 人と叡智が集まる場

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Vol.107 No.2 (2024/2) 目次へ

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巻頭言

人と叡智が集まる場 A place where people and wisdom gather調査理事 伊達木 隆

 私は,移動通信システムの研究開発に関わってきました.学会に集う多様な方の中で言えば,比較的,実用化や製品に近い領域で仕事をする機会が多かった方であると思います.若かりし頃,最初に関わったのは,第3世代携帯でした.当時は,第3世代の実用化が近づいて通信装置の試作機開発という時期でした.CDMAというアクセス方式を新たに適用するため,忙しくいろいろな技術検討が必要でした.そこから第4世代,第5世代と移動通信システムが進化してきましたが,第4世代まではCDMA,OFDM,MIMOほか,目立つ技術キーワードがあり,そういった技術が新しい世代の特徴として説明され,多くの関連研究発表があるなど技術動向をけん引していました.その様相が第5世代以降では,流行の技術はあるものの,技術ワードが世代交代を象徴するイメージが薄くなり,代表スペックとユースケースで説明されるようになり,今後の技術でなくユースケースが何かという議論が多くなったと感じます.具体的なユースケースやアプリケーションから考えることは,実用される研究という意味で大変すばらしい取組みです.しかし,ネガティブな見方をする人からは,ブレークスルーとなる大きな技術要素がないことからのテーマ探しになっている側面も見え隠れすると感じているのではないでしょうか.特に企業の方は,どうしても実用に近いところが重点になると思いますが,幅広い人材のいる学会という場ですので,時期やユースケースはまだ分からない,実現性があるのか分からなくても気にせず,とにかく従来にない大きな変革を狙った基礎理論や基礎技術から積極的に挑戦してほしい(もちろん結果としてすごいブレークスルーを起こしてほしい)と願います.それが周辺の様々な研究を誘発し,分野全体をも活性化させます.

 そこで今,新しいアイデアをどんどん出し,いろいろな知恵を交換し合う「三人寄れば文殊の知恵」効果が非常に重要ではないでしょうか.そういった知恵の交換の場として非常に良い場が,電子情報通信学会です.

 電子情報通信学会ホームページで,TOP画面から「学会について」,「概要/理念」と進むと,基本的な本会の目的,理念が紹介されており,「本会は,電子工学および情報通信に関する学問,技術の調査,研究および知識の交換を行い,もって学問,技術および関連事業の振興に寄与することを目的とする」と記載されております.基本的ですが,正に現在,重要な点でもあります.普段,学会の開催情報など一部の用途でしか本会ホームページを見る機会がないという方も実は多いと思いますが,そういった方は,是非,今一度,眺めて頂ければと思います.様々な情報やサービスが掲載されております.国際標準化をはじめ,将来の技術やシステムについて話す場合に,世界の人たちと方向をそろえることが非常に重要になっています.こういった分野では,本会の活動を,よりグローバルに広げることも重要となります.例えば学会では,研究会の海外活動をより積極的に行えるように補助金などで援助したり,各種海外連携のイベントも推進しています.特に,このような人たちと話す都合の良い場や機会が欲しい,そのような御意見,御提案を是非本会に向けて出して頂きたい.そういった場を作り,皆で研究推進することが学会の目的ですので,皆で一緒に,活発な交流ができる学会に変えることができます.

 ブレークスルーを起こすための土台となる場,人と叡智が集まる場として,本会は最適な場です.是非積極的に学会活用して頂いて,いろいろな活動に参加し,新たな活動を作り,多種多様な方と交流の機会を増やして頂ければと思います.


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