巻頭言 技術革新を産み出す場としての

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Vol.107 No.3 (2024/3) 目次へ

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巻頭言

技術革新を産み出す場としての学会の役割 The Role of Academic Societies as a Place to Produce Technological Innovation基礎・境界ソサイエティ会長 梶川嘉延

 生成AIの急速な普及と進展が半導体関連産業の拡大の大きな起爆剤となっています.国内においても,次世代半導体向けの生産拠点が今後形成されるなど,半導体関連事業が急ピッチで促進されています.また,経済産業省を中心に「半導体戦略」が策定され,研究開発から生産,人材育成までを強化する方針も示されています.とりわけ次世代のAI向け半導体チップ開発が重点課題と位置付けられています.AI向け半導体は,機械学習用の演算処理をハードウェアで高速化する技術が鍵となります.GPUなどの汎用プロセッサに加え,電力効率や演算効率の更なる向上のためFPGAやASICの開発競争も活発化しています.

 生成AIは,それ自身を動かすための専用ハードウェアの開発だけでなく,これらの専用チップの設計そのものを加速化し,半導体関連産業の更なる発展に寄与する可能性があると言われています.私自身は生成AIや半導体関連技術に関しては門外漢ではありますが,現在の状況は単なる一過性のものではなく大きな技術革命が起こっている(若しくは起こった)歴史の真っただ中にいるような感覚を素人ながらも感じている状況です.

 このような状況の中,電子情報通信学会はこうした生成AIやそれに関連した半導体関連技術の研究開発をこれまでもけん引し,今後もけん引し続けることは疑いの余地がありません.例えば,現在私が運営に携わっている基礎・境界ソサイエティには上記に関連した様々な研究専門委員会があり,研究会や国内・国際会議を通じて活発に研究開発が推進されています.

 御存じのように基礎・境界ソサイエティは,電子情報通信学会が関わる「電子」「情報」「通信」の三つの伝統的な領域の基礎を幅広くしっかりと支えていくこと,これらの領域を掘り起こして先進的な新しい領域の創生につながる研究活動を積極的に支援し推進することを理念とし設立されました.私が知る限り,このような位置付けのソサイエティを要する学会は他に例がないと思われ,先輩諸氏の慧眼にただただ感服するあまりです.

 会員の中には基礎・境界ソサイエティは他のソサイエティに属せなかった単なる境界領域や基礎領域の研究専門委員会の寄せ集めと思われている方もおられるかもしれませんが,私は冒頭で述べたような時代をけん引する革新的な技術を生み出す,若しくはそれらにすぐさまにキャッチアップできるポテンシャルを有するソサイエティであると考えています.一見,関連性がないような研究専門委員会が多々ありますが,それらがシナジー効果を発揮することで,新しい研究分野を開拓し,それに適応できる可能性を有しています.

 ソサイエティを運営する立場としては,所属する全ての研究専門委員会が活発に活動を推進できるような場やサポート体制を提供すること,特に学生を含む若手研究者の参画を促進する施策を講じることが重要と考えています.基礎・境界ソサイエティには他のソサイエティにはないサブソサイエティ制度という一種のグループ制度があります.この制度を設立した当時は,新しいソサイエティを産み出す土台となることを目的としておりましたが,この制度をうまく活用することで,研究専門委員会の単なるグループ化だけでなく,シナジー効果を発揮し,基礎研究の裾野を広げ,産業応用につなげる役割を持たせることができると考えています.このように,次代を担う若手世代が中心となって技術革新を生み出すことができるような場を提供するという学会の主たる役割を常に意識することが,この激動の時代にはますます重要になると思われます.


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