小特集 AIチップに向けた不揮発性メモリ技術とその展望 小特集編集にあたって

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Vol.107 No.4 (2024/4) 目次へ

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小特集

AIチップに向けた不揮発性メモリ技術とその展望

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 開 達郎

 AI技術の目覚ましい進歩に伴い,我々の日常生活の中でもAIが利用される機会が増えている.最近ではユーザが望む文章,画像,会話などのコンテンツを生み出すことができる生成AIが普及し,2030年には国内外の生成AI市場は現在の10~20倍に成長するとの予測も報告されている.このような背景からAI技術の更なる進展が望まれているが,高性能なAIを現状のハードウェアで実現しようとすると膨大な電力を消費することが課題となる.この課題に対し,電力の供給なく情報を保持できる不揮発性メモリが重要な役割を果たすと考えられており,AIハードウェアへの適用が活発に議論され始めている.

 そこで本小特集では,AIへの応用が期待される最新の不揮発性メモリ技術に注目する.各章では,深層学習における不揮発性メモリの役割や各種不揮発性メモリデバイス技術の最新動向,更にそれらをAI技術へ応用した実証例などについて,各分野の研究に取り組まれている方々に御解説頂く.

 第1章では,AIハードウェア技術における不揮発性メモリの役割や課題について御解説頂き,不揮発性メモリを応用した演算手法として時間領域アナログ演算方式を御紹介頂く.

 第2章では,不揮発性メモリとして現在広く普及しているフラッシュメモリの大容量化技術を御解説頂くとともに,三次元フラッシュメモリセル技術のニューラルネットワーク応用について御紹介頂く.

 第3章では,メモリスティブな特性を示す金属酸化物系メモリデバイスを用いてシナプスを模倣する技術について御解説頂き,本技術をニューラルネット回路に応用した結果を御紹介頂く.

 第4章では,生体シナプスの多様な機能実装に適した4端子メモリスタ技術を御解説頂き,単一4端子メモリスタ素子上に実装された高度なヘテロシナプス機能などの実証結果を御紹介頂く.

 第5章では,強誘電体材料を用いたメモリデバイスの原理や最新動向を御解説頂き,それらの技術をAIチップ向けの2入力1出力積和演算回路に応用した結果を御紹介頂く.

 第6章では,スピントロニクス技術を用いた不揮発性メモリの最新動向について御解説頂き,これらを用いた不揮発性論理演算素子,In-memory computingについて御紹介頂く.

 第7章では,相転移材料を用いた不揮発性メモリ技術の特徴と最新動向について御解説頂き,AI技術への展開に向けた人工シナプス応用について御紹介頂く.

 第8章では,粘菌の情報処理プロセスを模倣して組合せ最適化計算を行う「電子アメーバ」の原理や特徴を御解説頂き,不揮発性メモリがもたらす性能向上の可能性について御議論頂く.

 最後に御多忙な中執筆に御協力頂いた著者の皆様に深く感謝致します.また,本小特集の企画,提案に御協力頂いたシリコン材料・デバイス(SDM)研究専門委員会の皆様,並びに編集に御協力頂いた本会誌ワーキンググループCの皆様にはこの場を借りまして感謝申し上げます.

小特集編集チーム

 開  達郎   松久 直司   板谷 太郎   秋田 純一   荒生  肇   大島 大輔   大寺 康夫   小寺 哲夫   佐道 泰造   高野 恭弥   辻󠄀  寧英   萩原 達也   藤井  剛   古谷 彰教   松田 信幸 


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