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AIチップに向けた不揮発性メモリ技術とその展望
小特集 1.
不揮発性メモリを用いたニューロモルフィックAIハードウェアの最新技術と今後の展望
Latest Technologies and Future Prospects for Neuromorphic AI Hardware Using Non-volatile Memory
Abstract
既存ディジタル方式を越える性能が期待されているニューロモルフィックAIハードウェアの構成法として,不揮発性メモリを用いたCiMアーキテクチャについて説明し,最新技術とその課題を示す.更に不揮発性メモリを応用したアナログ的な演算手法として,筆者らが提案している時間領域アナログ集積回路方式における設計法と,高効率化に適したリザバー計算モデルについて紹介する.
キーワード:不揮発性メモリ,ニューロモルフィック,コンピューティングインメモリ,リザバー計算
深層学習を中心とする人工知能(AI)技術の発展は著しく,社会のあらゆる場面に浸透しつつある.特に近年では,大規模言語モデル(LLM)に代表される生成AIがこれまでにない大きなインパクトを与えている.また,既に幅広く利用されつつある識別AIに関しては,車載,モバイル機器,IoT,ロボットなどのエッジ処理にも幅広く適用が検討される段階に達している.生成AIと識別AIのどちらに関しても,更に応用範囲が拡大することは確実と考えられるものの,一方で多くの課題も指摘されている.その中でも,特にAI処理に伴うエネルギー消費に関しては,喫緊の課題と考えられる.例えばLLMのChat-GPT-3では必要とされる演算性能が3.1×1023 FLOPSに達すると言われている(1).これは,画像認識においてよく知られた深層ニューラルネット(DNN)モデルであるResNet152での1.0×1019 FLOPSに対して,30,000倍を超えている.
AIの学習は主にクラウドで実行されるが,その物理的計算資源であるデータセンターでの電力消費量は,現状のトレンドを外挿すると2050年には全世界の総消費電力量(384PW・h)の86%に達するとの予測がある(2).そこで,AI計算を全てクラウドで実行するのではなく,エッジ側でも可能な限りAI計算を行うエッジAI技術が今後更に重要性を増すと考えられる.すなわち,AI演算をクラウドからエッジにできるだけ移行させることで,データセンターでの冷却装置を含む膨大な電力消費と,通信に要する電力を削減することができると期待されている.そのため,これまでに専用のエッジAIチップが各種開発されているが,集積回路分野で最高峰の国際会議ISSCC等で発表される既存のアーキテクチャに基づくAIチップの演算エネルギー効率はここ数年,数十TOPS/W(用語)のオーダで飽和気味である.
これに対して,電源を切っても記憶した値を保持できる不揮発性メモリの開発が盛んに行われており,AI技術で必須となる大量のパラメータデータの記憶,及び演算途中結果の一時記憶への応用が期待されている.不揮発性メモリを適用することで,記憶したデータを使用するとき以外はメモリの電源を切ることができるため,DRAM等における記憶値のリフレッシュ動作,及び半導体微細化に伴うSRAM等での漏れ電流による消費電力を削減することができる.
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