特集 2. 人工知能と人間の共進化を目指して

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特集2. 人とAIの協働
人工知能と人間の共進化を目指して
Co-evolution of Artificial Intelligence and Humans
坂無英徳 村川正宏 辻󠄀井潤一

坂無英徳 国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センター

村川正宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センター

辻󠄀井潤一 国立研究開発法人産業技術総合研究所情報・人間工学領域

Hidenori SAKANASHI, Masahiro MURAKAWA, Nonmembers (Artificial Intelligence Research Center, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Tsukuba-shi, 305-8560 Japan), and Jun’ichi TSUJII, Nonmember (Department of Information Technology and Human Factors, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Tokyo, 135-0064 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.5 pp.391-397 2024年5月

©2024 電子情報通信学会

abstract

 人工知能(AI)と人間の協働・共進化を目指して産業技術総合研究所で推進しているプロジェクトについて概要を紹介する.本プロジェクトでは,AIの信頼性を保証する枠組みや,基盤モデルを中核として系統的にAI開発する手法など多面的な研究開発が実施されているが,本稿では,AIと人間という二つの異なる知能体の特徴を生かして協働及び共進化を実現する取組みの成果を紹介する.

キーワード:人工知能,人との協働,判断根拠,ワールドモデル

1.は じ め に

 人工知能(AI)と人間との関係を考える立場には,大きく二つの流れがある.一つは,AI研究の初期からの立場で,人間の相似物を作る,すなわちできる限り自然知能(人間)に近い人工物の構築を目指している.もう一つは,AIの擬人化(Anthropomorphism)を避け,人間を中心に据えて,人間が使う道具としての技術を開発する立場である.

 後者の立場からは,高い自律性や学習機能を持つAI技術という道具の信頼性をどのように担保するか,多様な適用分野に適合した道具をどのように系統的に開発するかが課題となる.また,自然知能とは異なった知能を持った道具の出現は,その差異を有効に生かすための協働・共進化の技術という,挑戦的な課題も生み出した.

 産業技術総合研究所(以下,産総研)が2020年度から進めてきたNEDO「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」(以下,共進化プロジェクト)では,(1)二つの異なる知能体の特徴を生かす協働・共進化の手法,(2)道具としての信頼性を保証する枠組み,(3)基盤モデル(Foundation Models)を中核にしてAI技術を系統的に開発する手法,という三つの柱をたて,これらの課題に取り組んできた.

 また,現在のAI研究は,人材や計算リソース,データを集積した総合的で統合的な研究体制が必要になっている.共進化プロジェクトでは,巨大IT企業とは違った形態でこの集積を行うために,クロスアポイントメント,出向,招へいなどの形で,公的機関,大学,産業界から幅広く人材と技術を集結させ,基礎研究から応用研究までを一貫して行うネットワーク形の研究開発とそのハブを構築することを目指している.

 本稿では,2.で共進化プロジェクト全体の概要,3.でプロジェクトでの協働・共進化に関する研究の現況を紹介する.

2.プロジェクトの実施体制

 共進化プロジェクトでは,①人と共に進化するAIシステムの基盤技術開発,②実世界で信頼できるAIの評価・管理手法の確立,③容易に構築・導入できるAIの開発とを一つの研究開発拠点で同時並行的に進めている(図1).これにより,開発した成果を集約し得られた知見の共有や密な意見交換を可能にし,研究分野や組織の境界を超えた集団的な体制で効率的な研究開発を行うことを企図している.


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