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解説
RISC-Vとオープンハードウェアと日本の半導体業界の未来[Ⅱ]
――誕生から発展,適した用途,RISC-V Internationalの役割――
RISC-V, Open Hardware and the Future of Japanese Semiconductor Industry[Ⅱ]: How Started and Growth, Suitable Applications, and the Role of RISC-V International
A bstract
前回[Ⅰ]では主にRISC-Vの技術的側面を紹介した.CPU命令をオープン規格にしたRISC-Vは,オープンソースによる実装の公開を促し,従来と違い国境を越えた技術開発を実現している.またオープン規格であるメリットを享受してソフトウェアエコシステムが形成されている.これがRISC-Vの得意不得意とする市場に影響している.このことはコミュニティ活動によるエコシステムの成果が大きな役割を持っていることを示しており,RISC-V Internationalはエコシステム醸成に貢献している.
キーワード:RISC-V,セキュリティ,AI,オープンソースPDK,ディジタル技術,輸出競争力
RISC-V自体はUC Berkeleyで研究開発されてきたRISCのコンセプトに基づいて設計されたCPUの第5世代目(図1)(1)である.第4世代目までのRISC設計はMIPS CPUとして商品化されることが多かった.RISC-Vのネーミングはこの第5世代目であることから名付けられ,呼び方はリスクファイブである.2011年にAndrew Waterman,Yunsup Lee,David A. Patterson,Krste Asanovicにより最初のRISC-V ISA(2),(3)が発表され,2015年にコミュニティ醸成のためUC Berkeleyとは独立した中立のRISC-V Foundationが組織されISA規格の管理が移管された.その後,2018年にLinux Foundationと提携,2019年に拠点をスイスに移転,2020年に組織名をRISC-V Internationalに改名して現在に至る.このRISC-V ISAを起案した4人は創立メンバとしてRISC-VコアIPをビジネスとするSiFive社を立ち上げた.
米国政府がRISC-Vプロジェクトをファンディングした背景として,CPU内部を理解,自分で改造や実装できる人材を増やすことでそのような人材が米国のシステムLSI企業であるIntel,AMD,Qualcomm,TI,Freescale等で活躍,あるいはそのままRISC-V CPUの会社を起業することで米国の競争力向上を目指したものと思われる.中にはRISC-VはArmに対抗して肩入れするためのプロジェクトだという意見があるが,実際にRISC-V企業として起業したSiFive,Ventana,Rivos,米国企業のQualcomm,TI,FreescaleなどArmを製品化している企業,並びにIntel,AMD陣営の市場での強さを見ると人材育成による国家の競争力向上につながっているのは間違いないと思われる.
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