巻頭言 ジュニア会員制度と学校教育

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Vol.107 No.6 (2024/6) 目次へ

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巻頭言

ジュニア会員制度と学校教育Junior Membership and School Education副会長 田口 亮

 2020年6月から「ジュニア会員制度」を導入致しました.これは,小学生,中学生,高校生,高専生,大学生に,その多感な時期から電子・情報・通信分野に対して興味を持ってもらい,将来の我が国の技術を支える人材になって頂くことを願って創設された制度です.私自身,ジュニア会員制度の導入時からジュニア会員運営委員会(現,若手会員活性化WG)の委員長を務めております.私の力不足で十分にジュニア会員制度が発展しておりませんが,日頃から考えていることを記させて頂きます.

 ジュニア会員を獲得するためには,その会員層(小学生,中学生,高校生,高専生,大学生)に有益なサービスを提供する必要があります.重要なことはそのサービスと学校教育との関わりだと思っています.その観点から「小学生,中学生」,「高校生」,「高専生,大学生」を分けて述べさせて頂きます.

 1980年代後半から「理科嫌い・理科離れ」という言葉が日本の教育界に登場し,理科離れ問題が認知されました.本会もこの問題を深刻に受け止めて1995年から解決の取組みを開始し,1996年に「科学実験教室」を始めました.それから,25年以上の時が過ぎましたが,この問題は解決に至っておらず,「小学生,中学生」に対しては「科学実験教室」の実施が今も再優先すべきことと思います.実際,各支部の協力も得ながら「不思議がいっぱい科学の世界」というタイトルで「科学体験教室」が継続されていて,今後,更なる開催回数の増加が必要でしょう.

 2022年度から高校に「総合的な探求の時間」が新たに導入されました.文部科学省は,探究を「問題解決的な学習が発展的に繰り返されていく」過程であると定義しています.具体的には「課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現」を何度も繰り返させる学習です.高校で行われている課題例を調査してみますと教科「物理」に関連する課題も多く,その中には本会と関連する電子・情報・通信の課題も含まれています.「高校生」に対してはその探求における最終的な「まとめ・表現」の場を本会が提供することが有効であると思っています.そのためには,高校―学会の連携体制を確立し強化する必要があります.端的に言えば高校とのパイプ作りが重要です.

 国立高専では全ての学生に到達させることを目標とする最低限の能力水準・修得内容である「コア」と,高専教育のより一層の高度化を図るための指針となる「モデル」を合わせて「モデルコアカリキュラム」を策定しています.「モデルコアカリキュラム」をベースとしたカリキュラムでは「知識・実験」,「人間力」,「主体的な学び」がポイントとなっています.「主体的な学び」においてはロボコンなど各種コンテストや企業との共同学習等を奨励しています.そして,「主体的な学び」での成果の発表の場を本会が提供できるわけです.多くの理工系大学においても低学年から実験,実習以外のアクティブラーニング(PBL)科目が導入されてきています.大学低学年の学生における成果発表の場も学会が提供できます.すなわち,「高専生,大学生」に対しては主体的学習・PBL科目等の成果発表の機会を本会が提供することが有効であることになります.

 昨今,日本の科学技術力が低下しているとの指摘がございます.特に,若手研究者の育成や革新的な研究開発の推進,産官学の連携強化など,が求められています.若手研究者の育成という観点からもジュニア会員制度が機能することが重要でしょう.そして,本会における「ジュニア会員制度」を本会会員の皆様と一緒に成長させたいと切に思っております.


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