ニュース解説 GPT-4の化学研究への応用可能性

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Vol.107 No.7 (2024/7) 目次へ

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◆今月のニュース解説

 GPT-4の化学研究への応用可能性

 Applicability of GPT-4 in Chemical Research

GPT-4の化学研究への応用可能性

 東京工業大学の研究チームは,OpenAIが開発した大規模言語モデルGPT-4の化学研究への応用可能性を検証した.GPT-4は有機化学や物理化学の知識を有し,次に行うべき実験条件や合成経路の提案,ロボットアームの制御を通した自動実験化など,多岐にわたるタスクで一定の能力を示した.

 情報科学を化学や材料分野で活用する取組みは2020年前後から非常に活性化してきたものの,シミュレーションと実験結果のずれ,実測データを収集するためのコスト,複雑なデータの扱いなど,実用化に向けては諸問題があった.GPT-4のような科学的思考能力を模倣できる言語モデルは,こうした課題の解決に貢献する可能性がある.

 研究チームは化学事象の認識・分析・予測・計画の4領域でベンチマークタスクを設定した.GPT-4は情報科学者によって作られたAIだが,大学院レベルの知識を要する化学関連のタスクも推進可能であった.例えばGPT-4は化合物の物性データや特徴に関する知識を有しており,性質の違いを分子構造と関連付けて説明できた.更に,モデルが持つ化学知識を組み合わせることで,未知の材料の物性を適切に予測できる事例もあった.このような「化学的な思考を言語的に行うAI」は,従来の「数値のみ扱うAI」(例えばブラックボックス探索アルゴリズムとして知られるベイズ最適化)に比べて汎用性が高く,より優れた実験条件の提案能力を示すことが分かりつつある(図1).

図1 特定の化学反応系の収量を高めるための仮想タスクの例  X軸は試行錯誤の回数,Y軸は収量を表す.GPT-4(橙線)は化学反応の理論を考慮しながら,適切な実験条件を提案できる.一方,既存手法であるベイズ最適化(青線)は化学理論を考慮できないので,特に試行錯誤の初期段階ではランダムな探索しかできず,収量が低くとどまる.グラフ中の細線は3回の試行の生データ.太線は平均値,塗り潰しはエラーバーに対応するばらつきを表す.


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