解説 電磁波に依存してきた通信概念の拡張について

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 解説 

電磁波に依存してきた通信概念の拡張について

Prolongation of Communication Concepts Dependent on Electromagnetic Waves

小塚洋司

小塚洋司 正員:フェロー

Youji KOTSUKA, Fellow.

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.8 pp.805-810 2024年8月

©2024 電子情報通信学会

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 近年,通信技術はTHZ波も視野に入れた高周波化時代を迎えている.こうした時代の到来を見据え,筆者は1980年代から将来あるべき通信技術について検討を重ねてきた.その一つが本稿で紹介する電波だけに依存しない通信方式の提案である.原理的には,あらゆる物理現象を利用する通信方式である.特に,可変バーコードの考えを導入することによって大量の情報通信が可能となる.本方式は,システム構成が比較的簡単で機密性も高いという特徴を備えている.本稿では,この新しい通信システムの具体的な構成例について解説する.

キーワード:新しい通信方式,通信の機密性,可変バーコード,メタマテリアル

1.は じ め に

 「事上磨錬」.本稿で紹介する研究ほど王陽明が諭すこの実践論を強く感じたものはない.

 ここでは,高周波化時代を見据え,従来電磁波に強く依存してきた通信概念を種々の物理現象を使う方式に拡張した「新しい通信方式」について紹介する(1),(2).この研究は,筆者が大学の卒業研究をNTT武蔵野研究所の電波伝搬研究室で御指導頂いたことに始まる.1980年代であった.この研究を通して,将来通信周波数が高周波化した場合の通信は,いかにあるべきかを考え続けてきた.

 本稿では「通信高周波化時代の新たな通信方式」について概説する.主な内容は次のようである.

通信高周波化時代の問題点と新たな提案

構成原理の基礎

本システムの特徴と構成例

まとめ

2.通信高周波化時代の問題点と新たな提案

 通信周波数が高周波化すると,次のような問題が発生する.

 (a)従来,対流圏伝搬に寄与してきた反射や回折などの電磁波伝搬現象が高周波数領域ではもはや利用できなくなる(3)(5)

 例えば,反射現象では反射面の僅かな凹凸により四方に反射する散乱波が発生する.このため低周波帯で実現できる鏡面反射現象が利用できない.外部から室内への通信も不可能となる.また,ビルの谷間や影では回折現象が利用できず通信ができない.このように高周波電波を通信に利用することは必然的に困難となる.実際,都内で実施されたTHZ波の空間通信実験では,通信ができないことが確認されている.

 (b)通信周波数の高周波化により放射波はビーム状となり,広領域通信が困難となる.

 (c)通信周波数は有限の資源である.このため,近い将来,電波の利用が増加するにつれて,通信機器間の干渉などの問題への対応も必要となる.

 (d)情報通信内容の一層の機密性が求められる時代が到来している.


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