小特集 7. Beyond 5G時代の光ファイバ技術

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Beyond 5G 時代を支える光ネットワークの技術動向と展望

小特集 7.

Beyond 5G時代の光ファイバ技術

Optical Fiber Technologies in Beyond 5G Communication

武笠和則

武笠和則 正員 古河電気工業株式会社フォトニクス研究所

Kazunori MUKASA, Member (Photonics Laboratories, Furukawa Electric Co., Ltd., Kameyama-shi, 519-0292 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.8 pp.796-804 2024年8月

©2024 電子情報通信学会

Abstract

 シリカガラス系の光ファイバは,非常に優れた特性を有しており,伝送媒体として世界中で広く用いられているが,Beyond 5Gの時代においてもシリカ系ファイバが主役であり続けると思われる.一方で,更なる高性能化が要求されることは間違いなく,例えば,超低損失ファイバ,高性能曲げ耐性ファイバ,高密度ファイバなどが必要になる.更に,従来のシリカ系ファイバが有する様々な限界を打ち破る光ファイバとして空孔コアファイバの注目が高まっており,実用化に向けた検討も加速している.Beyond 5G時代には,空孔コアファイバが次の主役候補として大きく躍進する可能性がある.

キーワード:超低損失ファイバ,高性能曲げ耐性ファイバ,高密度ファイバ,空孔コアファイバ

1.は じ め に

 光ファイバは,情報伝達媒体として,世界中で我々の生活を支えている,もはや生活に欠かせない基盤インフラとなっている.陸上はもちろんのこと,海底にも非常に多くの光ファイバケーブルが張り巡らされており,更に伝達すべき情報量も年々増加の一途をたどっているため,光ファイバ高性能化の要求がなくなることはない.Beyond 5Gの時代には,従来の文章や画像,動画像などの情報サービスだけでなく,超高画質動画像,バーチャルリアリティ,自動運転,遠隔医療などのサービスが日常のものとして使用されることが予測され,当然のことながら,これらの要求に対応可能な高性能な光ファイバが必要となる.

 Beyond 5G時代に要求される光ファイバは,適用エリアによって異なると考えられるが,どのエリアにおいても,現在よりも格段に性能の高い光ファイバ伝送媒体が要求される.海底や陸上長距離などの長距離伝送領域では,超低損失ファイバが使用されると考えられる.また,アクセスやFTTx,データセンターなどの陸上短距離領域では,高性能曲げ耐性ファイバが使用されると考えられる.更に,その両方のエリアにおいて,その高性能を維持しながら,高密度化も両立するという新たな特性が求められる.高密度化の実現手段は,細径化やマルチコア化などである.更に,従来のガラスコアファイバとは異なる原理で光を閉じ込める空孔コアファイバが,従来ファイバの様々な限界を打ち破る光ファイバとして,更に適用範囲を広めると考えられる.

 今回は,Beyond 5G時代を支えるこれらの新光ファイバ技術に関して,報告を行う.

2.Beyond 5G時代のシリカコアファイバ

 Beyond 5G時代においても,特性と量産性の両方に優れたシリカ系の光ファイバは,伝送媒体の主役として,広く使われ続けると考えられる.一方で,Beyond 5G時代を支えるシリカコア光ファイバには,その極限に挑むような特性が要求される.更に,それらの高性能を維持しながら,高密度化という新たな付加価値をもたらすことも期待される.ここでは,Beyond 5G時代に求められると考えられるシリカコア系光ファイバについて述べる.


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