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解説
大容量光配線に向けたメンブレン化合物半導体光デバイス
Membrane Compound Semiconductor Photonic Devices for Large Capacity Optical Interconnections
A bstract
データセンタートラヒックの増大やAI需要の高まりに伴い,情報通信機器間を接続する大容量光配線が強く求められており,光送受信機は小形化,高速化,低消費電力化の全てを満たすことが課題となっている.この課題に対し,量産性と高集積性に優れたシリコン(Si)光回路上に化合物半導体光デバイスを集積する技術が注目されている.特に,薄膜(メンブレン)構造を有するInP系光デバイスは強い光閉込めと小さな静電容量を両立する構造であり,光変調デバイスの高速化,低消費電力化を可能とする大容量光配線のキー技術である.
キーワード:光配線,異種材料集積,光変調器,レーザ
データセンタートラヒックの増大やAI性能の向上に伴い,大容量光伝送技術は従来の長距離伝送のみならず,データセンター内や情報通信機器内のボード上など短距離配線への適用も必要とされている.これに伴い,光送受信機は小形化,高速化,低消費電力化の全てを満たすことが要求される(1).近年,これらの要求に対して光送受信機を大口径Si基板上に高密度一体集積するSiフォトニクス技術が注目されており,光変調器,受光器,波長フィルタなどが一体集積されている.しかし,Siフォトニクス技術は量産性に優れる一方,Siの材料物性は必ずしも光デバイスの高性能化に向けて最適とは言えず,大容量光配線の実現に向けて課題が残る.課題の一つは光源の集積である.間接遷移形半導体であるSiを用いてレーザを作製することは極めて困難であり,レーザはチップ外に実装される.これが光送受信機のサイズ,実装コスト,消費電力増大の要因となる.また,キャリヤプラズマ効果を用いるSi光変調器はSiの有効質量や移動度に起因する性能限界があり,更なる小形化,高速化,低消費電力化が困難である.これらのSiの材料物性に起因する課題は,Siフォトニクス技術をベースとする光送受信機の更なる高性能化の障壁となってきた.
これらの課題に対して,Si基板上に化合物半導体などの異種材料を集積するヘテロジニアス集積技術が注目されている.例えば,InP系材料は通信用レーザの作製に用いられてきた直接遷移形半導体であるとともに,低消費電力かつ高速な光変調器にも応用されてきた材料である.このInP系材料をSi基板上に集積することで,高性能なレーザ,光変調器を小形Si光回路とともに高密度集積することが可能となる.近年,平たんな基板表面同士を貼り合わせる直接接合技術などの進展により,Si基板上にInP系レーザが集積された光送受信機の実用化も始まっている.
本稿では,Si基板上InP系材料集積技術に注目し,特に光送受信機の高速化,低消費電力化に有望なメンブレンInP系光デバイスの最新動向を解説する.
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