解説 ICTによる新社会システム創成と生産性[Ⅱ・完]――システム創成論からICTによる社会変革へ――

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 解説 

ICTによる新社会システム創成と生産性[Ⅱ・完]

――システム創成論からICTによる社会変革へ――

Innovating Social Systems via ICT, and Productivity[Ⅱ・Finish]: Systems Innovation Theory and Social Transformation through ICT

長谷川孝明

長谷川孝明 正員:フェロー

Takaaki HASEGAWA, Fellow.

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.1 pp.44-49 2025年1月

©2025 電子情報通信学会

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 本稿はICTによる新社会システム創成と生産性を二回構成で論じる第2回に当たり,システム創成論とICTによる社会変革,生産性について述べている.本稿の前半では,システム創成論として,方法論,プラットホーム論,IT四大インパクトとリアルワールド性,ICTと社会変革に関して考え方を紹介し,後半ではそれらを踏まえて,ICTによる新社会システム創成から究極の生産性向上を想定して週休6.5日制を遠望した未来の人間社会に関する思考実験的議論の展開を試みている.

キーワード:IT四大インパクト,研究開発施策課題設定,メタ議論,シェアリングビジネス,週休6.5日制


目次

1.ま え が き

 前号第1回(1)では,情報通信技術(ICT)に関係する研究開発とシステム創成論の導入部を述べたが,本稿はその続編に当たる.まず,システム創成論の残りの部分として,システム創成の方法論,プラットホーム論,「IT四大インパクト」と社会変革などを述べる.それらを踏まえて,ICTによる新社会システムの創成で生まれる社会の劇的な生産性向上を想定し,働き方を含めた未来の人間社会に関する思考実験的議論を行う.第1回でもお断りしたとおり,様々な根っこからこの種のMeta理論が生まれて,似ている部分も異なる部分もあるが,本稿でも第1回と同様に筆者が2000年以降進めてきた内容(2)(19)を中心に述べる.第1回(1)と同様にエッセイのように読み進めて頂ければ幸甚である.なお,本稿ではICTに加えて,情報技術の略語ITも用いており,これらは近年では不可分な状況であるが,本稿では文脈に応じて使い分けている.

2.システム創成論の展開部(2)-(19)

2.1 システム創成の方法論

 システム創成の方法論を紹介する(図1).よく使われてきたあるシステムから考え始めるとする.このシステムは「本質的に何のために存在するのか?」,「ユーザがそのシステムを使いたいと思う真の目的は何なのか?」,「何がうれしくてそれを使うのか?」など,徹底的に機能や目的を抽象化して,図の上部に向かって抽象化の上り階段を登ってゆく.その後に,新たに創成するシステムを世の中に出す時期を考えて,科学技術やライフスタイル・価値観,ユーザが持ち歩く可能性のある機器などを境界条件としながら,具体化の下り階段を下りてシステムを創ってゆく.例えば,システムを3か月後に出すなら簡単なサーバとアプリまで,3年後ならハードウェアの一部を含めて,15年後なら全く新しいハードウェアの普及も含めて大掛かりなシステムの構築まで可能など,社会に提供するまでの時間の長短によって,下り階段の到着地が変わってくる.

図1 システム創成の方法論:抽象化の上り階段と具体化の下り階段による階層思考的システム創成  本質を射抜いた十分な抽象化が重要である.


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