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解説
データクリーンルーム最前線
Data Clean Room: The Frontier of Privacy and Analytics
A bstract
企業活動の中でデータを活用した顧客理解は必要不可欠である.しかし,個人情報保護法の改正をはじめとした顧客のプライバシー保護の動きは年々強まっている.それにより,プライバシーを保護しながらデータ活用が可能なデータクリーンルーム(以下,DCR)が注目されている.2023年にKDDIではDCRを自社で,企業間でセキュアな環境でプライバシーを保護しながらデータ連携・活用を行うことが可能な環境を開発した(以降,KDDIのDCRをK-DCRと呼称).本稿では,KDDIが開発したDCRを例にとり,DCRの概要及びに最新技術を活用したユースケースの解説を行う.
キーワード:データクリーンルーム(DCR),個人情報保護法,秘密計算,匿名化
現在,世界中でデータの重要性が加速度的に上がっており,「データは21世紀の石油」と揶揄されるようになった.データを集約するだけでなく,そこから導き出される知見や示唆を基に,企業の戦略及び経済活動が決定される.総務省の情報通信白書でも企業外/組織外でのデータ活用が予想されている(1).
まずは,データ流通に関して米国と日本で比較する.2021年のIPAのDX白書から抜粋した日本と米国の比較したデータでは,目的に応じたデータ収集について,図1で示すとおり,米国が49.6%に対して日本は3.0%と顕著な差が表れていた.
また,不足データが生じた場合の対処として米国では「足りないデータを所有している外部組織と提携する」が図2のとおり,27.6%と2番目に高くなっており,組織間でのデータ流通の仕組みが活用されている(2).
具体的な例を挙げると,米国のコンサルティング企業であるMaximize Market Researchの調査ではデータブローカー市場と呼ばれるマーケティングを目的としたデータ市場の規模は2023年に2,521億ドル,日本円で約38兆円規模と評価されている(3).一方,日本では政府が主導する情報銀行というデータ連携手法が存在する.情報銀行は顧客が同意をしたデータのみを企業が活用することができるシステムとなっている.この仕組みで取得した同意済みの顧客を企業はマーケティング活用に役立てている.情報銀行が普及した場合の市場規模は年間208億円と推定しており,これは先述の米国と比較すると規模が圧倒的に小さい数値である(4).現状と将来予測ともに日本でのデータ活用は流通規模,情報の精度共に課題がある.
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