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21世紀,インターネットを見てみると私たちが日常目にする多くのページに,画像や動画像が埋め込まれている.ページ冒頭のアイキャッチ画像や説明図,インフォグラフィックス,動画像など.文字のみのWebページでは閲覧が伸びないことはもはや説明もいらない事実だろう.SNSを見れば,InstagramやTikTokなど画像や動画像がメインな作りも多く,文字ベースのX(旧Twitter)でさえも貼り付けられた画像や動画像であふれている.オンラインの世界では,もはやビジュアルなくして情報を届けることも,キャッチすることも難しくなってきている.
情報のディジタル化,オンライン化とともに進行してきたのが情報の「ビジュアル化」である.このような時代において,科学情報の伝達はどのように変わってきているのだろうか.本稿では科学を伝達する説明図,すなわち科学イラストに注目し,現代ならではの役割や課題を指摘し,科学イラストがもたらす未来へのインパクトや課題を考察したい.
そもそも,科学イラストとは科学知識を記録・表現・伝達する絵のことである.伝統的には植物図や解剖図のような記録のための科学イラストがあり,狭義ではそのような描画的な絵を「科学イラスト」と呼ぶ立場がある.一方,広義では科学的知識を伝える絵や概念図的な表現全般が含まれ,筆者もこの立場をとっている.例えば,論文や教科書に掲載される模式図や概念図,モデル図,申請書の概要図(ポンチ絵),非専門家向けの広報やWebサイトに利用する説明図や動画像などがある.実際,現代の科学専門のプロの科学イラストレーターは,描画的な絵から模式的な絵まで描くことが多い.描かれる対象の分野も多様で,生命科学や医学,化学,環境科学,天文など幅広い学術分野で広く利用されている.なお,医学医療系の分野は特にメディカルイラストと呼ばれ,歴史的経緯はやや異なるものの,科学イラストと重複・合流する分野を形成している.
科学イラストの制作技法を見てみると,これも多様で決まりはない.伝統的な手法としてはペン画や鉛筆画,水彩画などがあるが,PCが普及した現代は多くの研究者やイラストレーターは科学イラスト制作にPCソフトを利用して描画している.Adobe Photoshopや各種のお絵描きソフトのように,マウスで直感的に描くこともあれば,Adobe IllustratorやMicrosoft PowerPointのように図形や点と線を組み合わせて作画することもある.近年は3DCGソフトによる描画も普及している.科学イラストレーターによっては動画像まで制作する人もおり,メディアの多様化に合わせ科学イラストも多様化している.
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