小特集 ミリ波・テラヘルツ技術は未来のセンシングを変えるか?――電波センシング・イメージングの最新動向――小特集 小特集編集にあたって

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Vol.108 No.10 (2025/10) 目次へ

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小特集

ミリ波・テラヘルツ技術は未来のセンシングを変えるか?

――電波センシング・イメージングの最新動向――

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 平賀 健

 電波は,無線通信をはじめとして,センシング・イメージング,測位・測距,材料加熱・加工等に多岐に利用されている.中でも,電波を用いたセンシング・イメージング技術は,構造物診断や環境モニタリング,人物・物体検知への応用が進んでおり,その背景には,公共空間におけるセキュリティ確保,物流・製造業におけるDX(ディジタルトランスフォーメーション)や人手不足対策などの社会課題により,ますます多様化するニーズがあると考えられる.特に,ミリ波・テラヘルツ波を活用したセンシング技術は,そのハードウェアを構成するために欠かせないデバイス技術の進展により,急速にその実用化が進展しつつある.また近年は6Gモバイルシステム等の将来無線システムにおいて通信用電波を利用したISAC(Integrated Sensing and Communication)に関する検討も活発化しており,電波センシングの技術は今後一層注目される領域となるだろう.

 本小特集では,マイクロ波から,ミリ波・テラヘルツ波までの電波の透過性を活用したセンシング・イメージング技術に関してその最前線を紹介する.当該分野の研究者・技術者のみならず,電子情報通信技術全般に携わる本会誌読者の皆様にとっても有益な内容となることを狙い,実用化が進むセキュリティ応用や次世代センシングシステムの構築に向けた要素技術など多様な観点から,利用周波数帯順に,以下の4章で構成している.

 第1章では,セキュリティ検査用として開発が進められているウォークスルー型マイクロ波センシングシステムについて解説頂く.移動による撮像ぶれ補償機能を有するマイクロ波レーダとAI画像認識を組み合わせ,歩行中の利用者を停止させることなく,衣服下や手荷物内の危険物を非接触で検知する「インビジブルセンシング」技術の構成と実環境での性能を紹介頂く.

 第2章では,70GHz/80GHz帯を利用した高速な三次元イメージング技術に基づくセキュリティ検査システムについて紹介頂く.1,024素子の大規模なアレーアンテナを用いた高精度イメージング装置のアーキテクチャ,毎秒50枚のリアルタイム動画像として三次元撮像可能な試作開発について解説頂く.

 第3章では,波長が短く高い解像度の撮像が期待されるサブテラヘルツ波(300GHz帯)のアンテナ近傍界を信号処理により制御することで,高解像度かつ三次元のイメージングを可能とする技術について解説頂く.実証システムの開発事例とともに,実用化を見据えて装置構成上の課題に関する技術的アプローチとその検証成果が示されている.

 第4章は,更に高い周波数帯として1THzを超えるテラヘルツ波を用いた分光イメージング技術の解説として,高い出力を特徴とするテラヘルツ源と,画素数が1個のみの装置で二次元撮像を可能にするシングルピクセルイメージングを組み合わせることで,従来困難とされた遮蔽物越しの撮像と材料特定を実現する技術について解説頂く.更に圧縮センシングを適用した撮像高速化技術の実証結果が示されている.

 最後に,御多忙の中,執筆を御快諾頂いた著者の皆様に心から感謝申し上げます.また,企画立案から編集作業まで御協力頂いた編集チーム,編集委員の皆様,並びに学会事務局の皆様にも,この場をお借りして御礼申し上げます.

小特集編集チーム

 平賀  健   山之内慎吾   中川 雅弘   青山 哲也   片田 寛志 


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