小特集 2. セキュリティ検査のための高速3D MIMOミリ波レーダイメージャの開発

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Vol.108 No.10 (2025/10) 目次へ

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ミリ波・テラヘルツ技術は未来のセンシングを変えるか?

小特集 2.

セキュリティ検査のための高速3D MIMOミリ波レーダイメージャの開発

Fast 3D MIMO Millimeter Wave Radar Imager for Security Inspection

米本成人

米本成人 正員 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所電子航法研究所

Naruto YONEMOTO, Member (Electronic Navigation Research Institute, National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology, Tokyo 182-0012 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.10 pp.950-955 2025年10月

©2025 電子情報通信学会

Abstract

 近年一般客等を狙った事件の発生により,人が集まる場所におけるセキュリティ強化の需要が高まっている.セキュリティ検査による渋滞の発生や,被験者1名に対して多数の計測を可能とするため,筆者らは設置場所を自由に配置可能な構造のセキュリティ検査システムの開発を行っている.本稿では,Wバンドの電波を利用した高速ミリ波イメージングを実現するために開発した電波カメラや三次元レーダイメージャの映像化の測定原理を解説するとともに,試作したミリ波イメージング機器の概要を紹介する.

キーワード:MIMO,ミリ波,レーダイメージャ,セキュリティ検査

1.は じ め に

 近年,一般客等を狙った事件が発生していることにより,公共交通機関や大規模イベントにおけるセキュリティ強化の需要が高まっている.現状の検査手法としては,金属探知機と有人接触検査が古典的でかつ安価な手法である(1)が,国際空港などでは電波を利用した高度セキュリティシステムが導入されつつある(2)(4).これらの検査手法,システムにおいては,セキュリティ検査を行うために一人当り数~数十秒を要することとなり,検査時間による渋滞の発生が懸念されている.このような背景の中,現在セキュリティ検査を導入していない場所に新しい検査システムを導入する場合においても,人流が阻害されることを嫌い,導入が進んでいないのが実情である.

 また,空港のように法律で義務化されている場所においては,旧来の金属探知機によるセキュリティ検査に加え,東京オリンピックに向けた海外からの来客の増加に対応するため,多数の電波イメージングを用いた検査システムが導入され,運用されているところである(3),(4).現実の検査場においては,営業開始前にシステムが正常に動作していることを確認するため,メーカが提供する標準サンプルを体に貼付した係員が検査を受け,正しく検出できることを確認している.しかしながら,爆薬を模した非金属サンプルを用いたブラインドテストを行ったところ,ほとんどのケースで,未検知となる問題が生じている(5).これらの問題は,被験者1名に対して1回の測定しか行わないこと,電波を利用したシステムにおいては隠された物体の向きによって電波の反射が大きく変わるため,物体の電波反射が小さい方向から観測するとき,原理的に未検知となることに起因している.これらの背景から,被験者の姿勢を変えて複数回計測する必要性が示されている.

 そのような背景の中,多数のウォークスルー型検査システムが提案されている(6)(9).そのほとんどが電波を利用したシステムであるが,危険物を検出するために重要なファクタとなる,検査システムの解像度が開口の大きさと対象までの距離によって決定されることから,大きく,かつ近距離での測定を必要とするものが多い.このため,設置場所等にゆとりのない場所においては,検査手法の簡素化が求められている.


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