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ミリ波・テラヘルツ技術は未来のセンシングを変えるか?
小特集 3.
障害物背後を可視化するサブテラヘルツ波を用いた高解像度センシング技術
High-precision Sensing Technology Using Sub-terahertz Waves for Visualizing Hidden Objects
Abstract
実空間と仮想空間を結合したサイバーフィジカルシステムが社会課題の解決に向けて注目を集めている.仮想空間に実空間の情報を展開するには,高精度なセンシング技術が欠かせない.光波の高解像度と電波の透過性の性質を併せ持つテラヘルツ波は,物体内部や障害物の背後を含めた周辺空間を視覚化でき,効果的なセンシング手段となることが期待されている.近年,フォトニクスとエレクトロニクス技術の進歩により,100GHz~10THzと言われるテラヘルツ波の実用的な生成・検出に手が届くようになりつつある.本稿では300GHz帯を用いるセンシングシステムの概要と,実際に測定した結果を紹介し,高精度な三次元イメージングが実現できることを示す.
キーワード:センシング,テラヘルツ波,アレーアンテナ,レーダ,断層撮像
現在,国内においてサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ,人間中心の社会を実現するSociety 5.0の施策(1)が進められている.実空間の情報を仮想空間に正確に取り込むためには,高精度なセンシング技術が不可欠である.周辺の情報をセンシングする手段として光学カメラが広く普及している.光学カメラは高解像度に対象を捉えられる反面,遮蔽に弱く,障害物の背後や物体内部の情報が得られない.一方,レーダに代表される電波センシングは透過性に優れるものの,特に低い周波数においては解像度が低く,用途によっては詳細な情報が得にくい.X線まで周波数を上げれば金属内部を含めた解析が可能となるが,被ばくの問題から適用アプリケーションが限られる課題がある.
電波センシングは一般的に周波数を上げるほど高解像度な情報が得られる.100GHz~10THz付近の電磁波はテラヘルツ波と呼ばれ,エレクトロニクス技術とフォトニクス技術の間に位置することから,電波・光波双方の技術適用が難しく,未開拓周波数帯となっていた.近年,デバイス技術の進歩に伴ってテラヘルツ波の生成・検出が実現されつつあり,注目を集めている.例えば300GHzの電磁波は波長が約1mmに相当し,センシングに用いればmm級の解像度が期待できる.テラヘルツ波は電波の透過性と光波の高解像度の性質を併せ持つことから,これまでに非破壊検査や品質管理,危険物検知などへの応用が検討されてきた(2)~(5).
本稿ではテラヘルツ波を用いたセンシングシステムの概要と二次元,三次元イメージングの測定結果に加え,将来の実用化に向けた実装技術について紹介する.
図1に提案する断層撮像システムの基本的な等価モデルを示す.送信アンテナから照射されるテラヘルツ波は測定対象により反射し,二次元の受信アレーアンテナで受信される.受信アンテナ各素子の受信情報を重み付け合成,すなわち受信ビームを形成することにより,測定対象物の各部の反射係数を求めることが目的となる.測定対象はVoxelと呼ばれる空間単位で反射係数を算出するが,テラヘルツ波の場合,ビームを非常に細くできることからVoxelを細かく設定可能であり,高精細なイメージを得ることができる.図1においてVoxel からアンテナ素子
への受信信号を
,算出する反射係数を
と表記している.アンテナ素子
の受信信号は全Voxelからの信号の重ね合わせ
として受信される.
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