小特集 2. シリコンフォトニクスを用いた光電融合トランシーバ

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.108 No.12 (2025/12) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


シリコンフォトニクスの産業展開と新応用

小特集 2.

シリコンフォトニクスを用いた光電融合トランシーバ

Photonics Electronics Convergence Transceiver Based on Silicon Photonics

中村隆宏

中村隆宏 正員 アイオーコア株式会社

Takahiro NAKAMURA, Member (AIO Core Co., Ltd., Tokyo, 162-0801 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.12 pp.1140-1147 2025年12月

©2025 電子情報通信学会

Abstract

 AIを用いた自動化により機器の構造や構成が変わりつつある.すなわち,CPU/MPU,カメラやセンサがネットワーク化され大量の情報を伝送するため,サーバ内部,FA機器内部,航空宇宙及び自動車などの機器内部では,これまでのCu配線に代わり光配線化が重要になっている.この分野はこれまでの光通信とは異なり広い温度範囲での動作と高信頼,低コストが求められる.我々が,インフィールドフォトニクスと呼ぶこの分野は,正に光電融合トランシーバIOCore® に合致したアプリケーションであることを,IOCore開発の構想や経緯なども含めて述べる.

キーワード:シリコンフォトニクス,光電融合,インフィールドフォトニクス,Cu配線

1.は じ め に

 私がシリコンフォトニクスという言葉を最初に耳にしたのは1995年頃カナダ国立研究所(NRC)である.損失は大きいがSi細線導波路で光集積回路が将来可能になるという夢が語られていた.その後も私は化合物半導体レーザ開発に取り組んでいたが,2006年当時NEC社内でシリコンフォトニクス研究に関わることになった.そのときのシリコンフォトニクスの第一印象は,ビジネスに結び付けられるのは集積回路としてのモジュールコストの低減しかないというものであった.その当時,200mmラインのファウンドリーは既に存在していたが,Si細線導波路の損失は約2dB/cmと集積回路としては十分とは言えず,更に,ウェーハ面内均一性も波長デバイスを作製するには不十分であった.そこで,産業技術総合研究所が所有されている300mmラインを使わせて頂き,より低損失で均一性の高いシリコンフォトニクス基盤技術を作ることを目指し国家プロジェクトを立ち上げた.当初から東京大学荒川泰彦教授の御指導の下,2009年から開始されたFIRSTプロジェクト「フォトニクス・エレクトロニクス融合システム基盤技術開発」ではシリコンフォトニクス集積プロセス基盤技術を作ることを目指した.そして,この集積回路に搭載する光源として荒川教授が発明された量子ドットレーザとの出会いがあり,2.に示すように光電融合トランシーバであるIOCore(注1)の他社にない一番の強みになっている.更に,2012年から開始した未来開拓研究プロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」では,FIRSTプロジェクトの基盤技術を300mmプロセスで完成すること,更に,CPU周辺で光電変換を可能にする小形・低消費電力の光電融合トランシーバ開発を目指した.光電融合トランシーバのキーとなる技術は,2.に示すように小形のシリコンフォトニクス集積回路と光ファイバを光ピンと呼ぶ縦形ポリマー導波路で接続する技術である.これら量子ドットレーザと光ピン技術により広い温度範囲で高信頼な光電融合トランシーバであるIOCoreを実現した.FIRST及び未来開拓プロジェクトを行ってきた技術研究組合PETRAから,2017年にアイオーコア株式会社を新設分割会社として設立し,この光電融合トランシーバIOCoreの製造・販売を目指した.当初のアプリケーションはデータセンター内であったが,規格などでインタオペラビリティ(用語)が重要であり,マーケットに入り込むのが困難であった.一方で,閉じた系内ではインタオペラビリティーは必要なく,広い温度範囲で高信頼性を生かすことが可能である.3.では,閉じた系で用いるインフィールドフォトニクスへのIOCoreの適用に関して述べる.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。