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初めて大学の研究室に所属し,ソサイエティ大会での学会発表に参加して以来,長い間学会にお世話になってきました.その間,国際会議や研究会での発表,編集委員としての活動など,学会に深く関わる時期もありましたが,ここ数年は職務の関係で学会から少し離れていました.しかし,昨年から理事として学会運営に携わることで,再び学会やその活動の重要性を実感しています.
今回,その重要性を考える中で思い浮かんだのが「トランザクションメモリ」という概念です.これは,誰が何を知っているか把握し,必要なときに誰に相談すれば情報が得られるか分かることを指します.1980年代半ばにアメリカの社会心理学者ダニエル・ウェグナーが「誰が何を知っているかを認識すること」として定義しました.
組織においては,一人の情報量にとどまらず,知見を広げることで個人や組織全体の知識を深めることができます.学会の場では,会社や大学の枠を超えて知識が広がり,深まることが期待されます.昨今,求められる製品やサービスはますます高度化,複雑化しており,従来の枠組みを超えたスピード感と柔軟性のある連携が大学や企業に求められています.その際にもトランザクションメモリが柔軟な枠組み作りや連携先の判断に役立つと考えます.また,この考えは単に情報の流れや連携を円滑にするだけでなく,人間関係を広げ,信頼を築く基盤となります.学会の場を通じて,各自の所属機関に閉じず,広く緩やかな人のつながりを持つこと,特に学会のような対等な場でのネットワークを持つことは,心の豊かさにもつながります.学会の場で久しぶりに再会した研究者と話が弾む感覚は,皆さんも経験されたことがあるのではないでしょうか.
トランザクションメモリの構築やその基盤となるネットワーク形成において,学会が果たす役割は非常に大きいと考えます.現在,調査理事として国際委員会の活動に携わっておりますが,国際委員会の役割の一つは,国内に留学する研究者を含む海外会員へのサービス拡充です.留学生のネットワーク形成を支援するイベントとして,総合大会やソサイエティ大会でGlobalNet Workshop(GNW)を開催しています.先日のソサイエティ大会でのワークショップ開催は11月号の会誌でも報告しましたが,英語でのポスター発表では研究に加え,会話のきっかけとなる自己紹介や小話などの工夫も見られました.ここでの会話をきっかけとした広がりが今後生きると信じています.更に,学会活動を通じて築かれるネットワークは,研究者個々のキャリアを豊かにし,人間としての成長にも寄与すると考えています.学会は,研究者が最新の研究成果を発表し,意見交換を行う場であるだけでなく,異なる分野の研究者との交流を深め,新たな視点やアイデアを得る機会でもあります.これにより,研究者は自身の研究をより深めることができ,また新たな研究の方向性を見いだすことができます.
今後も,研究者の更なる交流と成長の場を提供するために学会も進化していきたいと思います.皆さんも是非,学会を活用してみて下さい.学会を通じて得られる知識や人脈は,皆さんの研究活動を支える大きな力となるでしょう.
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