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ネットワークの数理モデル
小特集 4.
無線LANに関する待ち行列モデルにおける地図情報の活用
Utilizing Map Information in a Queueing Model for Wireless LAN
Abstract
SNSなどの情報通信サービスは,スマートフォンなどのモバイル端末が普及したこともあり,多くの利用者を獲得している.普及するにつれてデータ通信量は増大し,通信事業者のネットワークをひっ迫させる一因ともなってきた.その解決策として,無線LANを有効利用して通信負荷を軽減させるモバイルデータオフロード技術が考えられる.モバイルデータオフロードを効果的に機能させるためには,無線LANの中継機器であるアクセスポイントを適切に配置することが重要である.本稿では,モバイルデータオフロードを想定した待ち行列モデルにおいて,実際の地図情報を活用した性能評価を紹介する.
キーワード:無線LAN,モバイルデータオフロード,地図情報,待ち行列モデル
「ネットワーク」という言葉は,文脈によりその受け取られ方は様々であると考えられる.人と人,あるいは組織同士が互いにつながり情報の伝達と共有を可能にする社会的なネットワークもあれば,鉄道や道路や航空のように人や乗り物が行ったり来たりするための交通ネットワークも挙げられる.あるいは人工知能の話題に事欠かない昨今では,ニューラルネットワークという脳の神経網を模倣した機械学習の手法も人口に膾炙されているので,「ネットワーク」として取り上げても受け入れられるだろう.しかし,本稿で扱うネットワークは無線LAN(Local Area Network)という情報通信ネットワークのことである.
無線LANを含む情報通信ネットワークはいろいろな要素技術が融合した結果として実現される.それら要素技術を設計するための方法論は,扱う要素技術ごとに異なる.本稿で扱う要素技術はネットワークを構成するリンクの帯域幅や,リンクの接続先であるサーバの処理能力などの資源を,どのように配分すべきか,またどれくらい準備すべきかに関わる.そのような問いかけに指針を与える方法論として,グラフ・ネットワーク理論や待ち行列理論のような数学的枠組みがある(1).
本稿ではモバイルデータオフロード(後述)と呼ばれる無線LANを有効利用する負荷軽減技術に関する数理モデルを扱う.特に無線LANの中継機器であるアクセスポイントの空間的な配置とモバイルデータオフロードの性能の関係に焦点を当てる.本稿で取り上げる数理モデルは待ち行列理論(2)を基礎とする.待ち行列理論を使った数理手法では理論的な側面を重視する傾向が非常に強く,それがために現実とのかい離が憂慮される.本稿では理論一辺倒の趣から少しでも脱却するため,実際の地図情報を活用する手法を紹介する.
スマートフォンに代表されるモバイル端末が世に出てからこの方,多くの人々から支持されてきた.電波さえ届けばモバイル端末を自由に移動させても通信できる.その利便性が最大の要因かもしれない.今やモバイル端末を通じてインターネット上で提供されるサービスを利用することは広く浸透しており,我々の日常生活で利用する機会は増すばかりである.更に動画像配信などデータ量の多いサービスも着実に拡充している.そのようなサービス拡充の後押しも背景にしてか,スマートフォンなどのモバイル端末そのものの性能も向上し,必然的にモバイル端末が送受信するデータ量も増大する方向で推移してきた.
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