特集 5. 災害時対応を想定したUAV飛行経路制御と自立スマートポールによる低空域無線ネットワーク

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通信インフラの災害時対応及び防災・減災に向けた通信技術
――令和6年能登半島地震を風化させないために――

特集

災害時対応を想定したUAV飛行経路制御と自立スマートポールによる低空域無線ネットワーク

UAV Flight Path Control and Low-altitude Wireless Networking Using Self-standing Smart Poles for Disaster Response

山崎 託 三好 匠

山崎 託 正員 芝浦工業大学システム理工学部電子情報システム学科

三好 匠 正員:シニア会員 芝浦工業大学システム理工学部電子情報システム学科

Taku YAMAZAKI, Member, and Takumi MIYOSHI, Senior Member (College of Systems Engineering and Science, Shibaura Institute of Technology, Saitama-shi, 337-8570 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.5 pp.440-448 2025年5月

©2025 電子情報通信学会

abstract

 災害時には,被災者の情報を収集するのみならず,被災地における情報の共有が重要な課題となっており,災害応急対策や避難所での生活環境向上に向け,それらの迅速な実現が求められている.本稿では,空域を活用することでこれらの課題を解決する技術について紹介する.ここでは,被災者から情報を収集する技術として,UAV(Unmanned Aerial Vehicle)を移動基地局として動作させ,巡回させる飛行経路制御,被災地におけるネットワークの構築と情報を共有する技術として,自立スマートポールによる低空域無線ネットワークとその応用例について紹介する.

キーワード:UAV,飛行経路制御,移動基地局,自立スマートポール,無線ネットワーク

1.ま え が き

 令和6年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では,石川県の能登半島の沿岸地域を中心に大きな地震被害を受けた(1).この災害による一次避難者は4万人を超え,災害発生から1か月経過後も7,000人以上の一次避難者,5,000人以上の二次避難者となっていた(2).つまり,多くの避難者は,長期間にわたる,日常とは異なる被災地での生活を余儀なくされている.

 そのような中,災害応急対策の強化や,避難所等での生活環境の向上に向け,多くの新技術や方策が検討されている(3).まず,災害応急対策の強化に向けて,被災地環境に依存しない早期の被災状況の確認に加え,収集したデータの迅速かつ広範囲にわたる利活用,監視等による二次被害の防止が挙げられている.また,避難所等における生活環境の向上に向けて,災害に便乗した犯罪の防止に加え,正確かつ必要な情報の効率的な共有が挙げられている.つまり,二次被害の防止や被災地の防犯に加え,災害応急対応と生活環境向上の両面で,被災地での迅速かつ適切な情報の収集や共有,及びその利活用が課題となっていることが分かる.

 これらの実現には,情報通信技術による貢献が期待される一方,令和6年能登半島地震においては,固定通信網と移動体通信網の両者において,通信設備の停電,伝送路の損傷や故障により,大規模なサービス障害の発生が報告されている(4),(5).これらの災害復旧は,災害発生から2週間程度をめどとした応急復旧に加え,災害発生から1~2か月をめどに急速に進んだが,被災直後に必要となる情報の収集や共有を考えると,より迅速な対応が必要であると考えられる.

 そこで,地上の交通網や被災状況等の影響を受けず,被災地における迅速な一次対応が実現できる,無人航空機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle)の利活用が検討されている(6).特に,令和6年能登半島地震では,実災害対応にUAVが実際に運用されている(7).そのユースケースには,目視外飛行を活用した,様々な状況確認や点検,物資等の輸送,遭難者の探索が想定されており,今回の実運用と規制の改革に応じて,更なるユースケースの拡大が期待されている.

 このような背景の下,本稿では,被災地の空域を活用した災害時の一次対応を想定し,被災者の情報収集を目的としてUAVが被災地を巡回する飛行経路制御技術と,被災地におけるネットワーク構築と情報共有を目的とした自立スマートポールによる低空域無線ネットワーク技術とその応用について紹介する.


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